駝鳥

□Atelier番外編〜幸福な散歩道〜
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Atelier番外編

〜幸福な散歩道〜


5月の緩い午後の空気に

見るでもなく点けっぱなしになっているテレビをツトムは眺める

おやつにマオが焼いたホットケーキもどきを食べて

お腹が膨れたせいか欠伸がさっきから止まらない

テレビでは天気予報が流れていて

平和だなとかぼんやり考える

居間のソファーはその辺の安物のベッドになんか引けをとらないくらい気持ちよくて

後3分何もないこの空気が続けばいつもの如く寝てしまいそうだ

今にも瞼が下りそうなツトムを

新しく加わった(※)遊び盛りの住人がほっといてはくれなかった

ちっちゃな尻尾をブンブン振りながらジーンズの裾を引っ張るのが1匹


「……。」


ツトムは薄目でちらっとその姿を確認すると

気付かないふりをして目を閉じる


「クゥン、ワン!ワン!」

「……。」


相手も諦める気はない

ビーグルなのにまだ茶色が出てこない白黒の小さな顔
くるり黒目を輝かせながら
嬉しそうに何かを期待して脚元をパタパタと跳びはねる

その可愛いさに負けたツトムが眠たげな顔のままひょいと抱き上げると

ピンク色の薄い舌で顔をぺろぺろと舐めてくる


「ッ、こら。」


白いお腹がポッコリ出た小さな身体は遊びたくて堪らないとブンブン尻尾に合わせて左右に揺れる

昨日も夜中までおもちゃで遊んでたのに元気なもんだな、と

ツトムはとりあえず顔を洗う為にロビンを下ろして立ち上がった


「あっ、起きた。」
「オハヨー。」


洗面所に向かうツトムの背中に

キッチンダイニングで珍しく2人でお茶を飲んでいたマオと海が声をかけてくる

寝てねぇんだけどな…。


うとうとはしてたけど、と思いながら適当に片手を上げて返事をした


顔を洗って部屋着にしている黒の七分袖のTシャツをタオルと一緒に洗濯機に放り込んでいると


―ズリズリ


何かを引きずってくるような音がして


「…ワン!」


足元には黄色と黒の縞々の長い紐を一生懸命くわえたロビン


「……お散歩はまだ、早くねぇか?」


散歩は夕方に毎日交代で誰かが連れていく

だからいつもそのくらいの時間になるとこうして紐をひこずってきて玄関で待っているのだが…

しょーがねーな、と苦笑いを零してツトムはスウェットを羽織った



(※)過去御礼拍手小説〜夕暮れの出会い〜参照
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