月の民の唄
□日は夜を知らず月は昼を知らず
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「さて、そろそろ真面目な話をしようか。初めまして、来訪者さん。この国を治めている、リカルド・サン・ワーグナーだ。こっちが宰相の……」
「朝比奈悠紀と言います」
「蒼姫紗夜です」
「色々と聞きたい事もあるだろう。長くなるだろうから座りたまえ」
勧められるままに席に着くと、これまで紗夜の両脇にいたアークとフェイトの二人はリカルドの後ろへと回ってしまった。
少し心細さを感じながらも、紗夜は真っ直ぐリカルドを見る。
「それじゃあ、まず君がコチラに来る前のことから聞きたい」
「来る前?」
「コチラに来るきっかけになったことがあったと思うのだが…」
「何があったか自分でもよく分からない所もあるんですけど………」
紗夜は森で目を覚ます前までの、いつもと何も変わらなかった時間の事を、ゆっくりと話し始めた。
5人で学校からの帰り道を歩いていたこと。
いつも通る神社の前に来たとき、変な光を見つけた事。
興味本意でその光に近づいたら、光が自分達を包んだこと。
目が覚めたら森にいたこと。
そして、一緒に光に包まれたはずの友達が見当たらないこと………。