月の民の唄
□日は夜を知らず月は昼を知らず
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「ここがクリスタニア城だよ」
案内されたのは、紗夜の住んでいた場所とは全く違う、白い石造りの街だった。
大通りには様々な露店が並び、見たこともない色鮮やかな食べ物や、不思議な道具を売っている。
そんな街の中央にそびえ立つ巨城。その前に紗夜はいた。
「シンデレラ城より大きな城なんて初めて見た………」
「「は?」」
「いや、気にしないで」
何を言い出すんだコイツはという冷たい視線から逃れるように、紗夜は城を見上げる。
自分知識と想像の範囲内にある城とのどれよりも、クリスタニア城は大きく、美しかった。
「……見たら喜びそう」
でも、迷子になるか。と苦笑いを浮かべる。意識を失う瞬間まで共にいた友の顔が現れては消えていく。
「何をしているんだ? 行くぞ」
「あ、うん」
いつの間にか歩きだしていた二人を追って、紗夜は走り出した。