月の民の唄
□未来は黒き月と共に
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朝の森に気合いと金属のぶつかる音が響く。
城を出るときに貰った剣には魔法が掛けられており、初心者にも扱いやすくなっている。頭の中にイメージをすれば動きをサポートしてくれるものだ。
それでも鍛練を詰まなければ扱いきれないからと、毎日の様に相手をしてもらっている。
「っ……」
「そうそう、その調子」
紗夜の攻撃を全て受けながら、それでも余裕があるのかフェイトの表情は笑顔だ。
「わかっててもムカつくなぁ」
紗夜は剣を握り返すと、体制を低くして一気に間合いを詰める。横凪ぎに剣を一線させるが、フェイトの視線はそれをしっかりと捕らえている。
フェイトは自身の武器である双剣の片方で受け止めると、もう片方を紗夜の喉元につき出す。
「残念」
「参った。降参」
紗夜が降参のポーズをとると、フェイトは剣を仕舞う。
「ずいぶん腕をあげたんじゃない?」
「本当?」
城を出て3日目。アークの仲間と合流すべく、旅をしていた。
「元々、運動神経がいいんだろうな。筋がいい」
アークがおたまを右手に、タオルを左手に寄ってくる。
「凄いミスマッチ……」
「アーク、タオルありがとう」
アークの不釣り合いな格好を見ても、フェイトは何も言わない。彼にしてみれば普通なのかもしれない。
「朝ごはんできたぞ」
「じゃあ、ここまでにしようか」
「うん」
紗夜とフェイトは軽く汗を拭くと、アークの用意した朝食を食べ始めた。