月の民の唄
□凍てつく風が襲うとき天馬月より舞い降りる
1ページ/9ページ
「ねぇ、歩未。なんで私たちこんな所にいるんだろ?」
「わたしも聞きたいな」
紗夜と歩未が今いるところ。それはどこにでもある森の中なのだが、状況があまり良くない。
右を見れば、モンスター。
左を見ても、モンスター。
ちなみに、前も後もモンスター。
つまるところ、囲まれていた。
「こういう時に限って、アーク達いないし」
「すごくいいタイミングではぐれちゃったね」
もう笑顔もひきつっている。どうしろと言うのだ。
「あぁ、グルルーって鳴いてる気がする」
「胃袋行きは遠慮したいです」
背中合わせになり、背後からバクリは防いでいるが、このままでは彼らの昼食にされてしまうだろう。
「仕方ない。特訓の成果を……」
紗夜はアークから貰った水晶から剣を取り出す。
それを見て、歩未も同じように武器を取り出す。
「なんだ。丸腰じゃないんだ」
「黒耀さんに買ってもらいました」
「良いとこあるじゃん!!」
紗夜はマントをなびかせて体勢を低くする。擦れ違い様に飛び掛かってきたモンスターを一刀両断にする。
それを合図に、一斉にモンスター達が襲って来た。
「勉強がつまらなかったけど、平和だった日々に戻りたい……カモ」
「そんな事言ってないで、前!前!!」
紗夜は歩未を庇うように剣を振るい、歩未は紗夜を援護するように矢を放つ。
「素晴らしき連絡プレー」
「真面目にやろうよ」
次々と襲ってくるモンスター達を何とかやり過ごす。
右からのモンスターの攻撃を受ければ、左のモンスターを歩未の矢が射抜いていった。