月の民の唄

□冒険の始まりとの歌
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空を月が支配してからかなりの時間が経ち、辺りは夜の闇に包まれていた。
深夜を回ったことを伝える時計の音が部屋中に響く。

少年は中々寝つくことが出来ずにいた。
ベッドから窓の側に移動すれば、ガラスの向こうにすっかり眠りの底についた町が見える。

夜の景色は自分だけが取り残された様な錯覚を起こさせる。

早く寝よう。

そう思い、少年がベッドに戻ろうと踵を返した時だった。
窓が閉まっているはずの室内に、どこからともなく風が流れてきた。
その風に乗って、微かに歌も聞こえる。
よく耳をすませると、歌は窓の外から聞こえてくる。

少年は不思議に思い、窓を開けてみた。

寝静まった町はそのままだったが、先程とは違った光景がそこにはあった。

否、そこにいた。

淡い金色の髪を風に揺らし、白いドレスを身にまとい、ゆっくりと歩いている。

少女は歌いながら、踊る様に歩き続ける。

少年の視線に気づいたのか、少女は少年の方へと顔を向けた。
透き通る様な青い瞳と目が合った瞬間、少年の意識は途切れた。

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