月の民の唄

太陽をべるの王
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「忙しいのは嫌いだ」

勢いよく机を叩くと、乗っていた書類が崩れ落ちていく。

「まったく、そんなことを言っている場合ではないでしょうに」

落ちた書類を拾いながら、朝比奈は息をついた。

突然の開戦。

その波紋は城内のみならず、国内全土に広がり始めていた。

「噂が拡大して混乱が起きる前に、正式に文書を出さなくてはなりませんよ」
「わかっている。だからこうして楽しくもない仕事をしているじゃないか」

文句を言いながらも、ペンを走らせるリカルドの手は止まらない。

「イーブルニアからは何も返答がないのか?」
「はい。今のところ……」
完成した分を受け取り、処理済みの山へと乗せていく。
リカルドの執務室には、通常業務分の書類に加えて、風の街での被害届、交易関係の被害、よくわからない苦情なとが机を埋め尽くしていた。

「あれか? これは、新手の嫌がらせか何かかね?」
「何を言っているんですか、臣下の優秀さの証明ですよ」

ここ数日の間、クリスタニアの臣下達は怒涛の様に働いた。必要な物をまとめ上げた書類の全ては、現在王のサイン待ちだ。

「臣下が優秀過ぎるのも考え物だな」

普段は楽ができて良いけれど、こんなときは優秀さが恨めしい。

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