月の民の唄
□日は夜を知らず月は昼を知らず
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「外もすごかったけど中もスゴイね」
雄大さを感じた外装とは違い、内装は落ち着いた装飾品で統一されていた。
磨きあげられた大理石の上に敷かれた絨毯の上を恐る恐る歩きながら、紗夜の目は忙しなく周囲を行き来している。
「そんなに珍しい?」
「え?あはは……」
笑いながらその様子を見ていたフェイトに、恥ずかしそうに笑い返す。
「向こうにはこういう城は無いのか?」
「無いこともないけど、私の住んでる国にはないよ」
「そうなのか」
逆に驚いた顔をされて、紗夜は思う。
ここは『違う』のだと。
「着いたよ」
無意識のうちに足元に落ちていた視線を上げると、フェイトが大きな扉の前で止まっていた。
「あの、これから何をするんですか?」
「この国の王に会ってもらう」
あまりにも普通に言われたので、一瞬普通に頷きかけた。が……
「え? ええ!! 王様〜!? ムリムリ、絶対無理!」
これでもかと言うほどに首と手を振る。自分はただの一般人で、王様とか偉い人に会うなんて。
「そんなに振ったら、首取れちゃうよ」
「あの人に気を使うことはない。気楽にしてろ」
笑ったまま、二人は扉を開けてしまう。
「いや、心の準備もまだ……」
紗夜の叫び声と扉が開く重い音が重なった。