月の民の唄
□日は夜を知らず月は昼を知らず
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部屋に入ってすぐに目に入ったのは、天井まで届く大きな窓だった。そこから室内に太陽の光を余すところなく取り入れている。
その窓の前に二人の男性が立っていた。
「アーク、少しは気を使ってあげてください。これでも一国の王なんですから」
「朝比奈のセリフの方が問題ある様に聞こえるのだが」
コツコツと足音を立てながら二つの影が窓から離れる。それにともない二人の容姿がハッキリとし始める。
一人は金髪に翠の瞳。金糸の髪には王冠が乗っている。
もう一人は眼鏡をかけていてクリーム色の瞳と髪をした、優しいげな顔立ちの男性だ。
「ただいま戻りました。リカルド王」
アークが金髪の方に頭を下げる。
「もう少し早く戻ってくれれば仕事がサボれたのに」
心底つまないといった顔で口を尖らせるその姿は、紗夜がイメージしていたものとは大分違っていた。
「この人が王様?なんか……」
「普通の王とはかなりのかけ離れているんだ、この人は」
「ちなみに、どんなのを想像してたの?」
「いや、あの……」
流石に『物凄く年をとった、フサフサの髭の、いかにも』を想像していたなんて言えずに、口ごもってしまう。