月の民の唄

□秘めたるはどこから昇る
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「月の民はレイバルンという国を治めていた。レイバルンは女王国でな、今とは比べ物にならないほど魔法と科学が発達していた国だったそうだ」
「へぇ、科学が発展した国か〜。あれ? でも、過去形?」

リカルドは確かに『国だった』と言った。しかも『そうだ』と曖昧な表現を用いて。

「約1000年前、レイバルンは謎の消滅をとげた。一夜にしてヴァルハラから消えたのだ。力を司る存在が消えれば、世界からその力は消えてしまう。でも、その後900年間、月は空に昇りつづけたんだ」
「どうして?」

紗夜は隣に立つアークを見上げて尋ねる。先程までの説明から推測するに、一対一的な構図が成り立っているのではないだろうか。なら、片方が消えたら、もう片方も必然的に消えるのではないか。

「何らかの方法で月を維持していたのだろう。あくまでも仮説だが」
「そして、100年前。月は突然空から消えた」

そこまで説明すると、三人とも黙ってしまう。それぞれが初めて見る月を見上げて。

「じゃあ、月がまた昇ったってことは、月の民の力が復活したってこと?」
「たぶんね」

フェイトが月から紗夜に視線を戻す。

「理由はこれから調べなくちゃならないけど」
「すでに朝比奈が動いている。その結果待ちになるが、アーク」
「はい」
「彼女の友人を探しながら情報収集も行なってくれ」
「わかりました」

アークとフェイトが頷くのを確認すると、リカルドは嬉しそうに笑った。

「さて、そろそろ本当に休もうか。こんな時間だしね。月が珍しいのもわかるけど」

そう言いながら窓から離れ、奥の扉の方へと歩いて行く。

「ちゃんと紗夜ちゃんを送ってあげてね」

後ろ手に手を振りながら、リカルドは部屋から出ていった。

「じゃあ、部屋に戻ろうか」
「はい」

アークとフェイトに送ってもらい、紗夜は直ぐに眠りに着いた。

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