月の民の唄
□凍てつく風が襲うとき天馬月より舞い降りる
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「あらあら、ずいぶん元気なお嬢さん達ね」
紗夜と歩未が休憩をとっているすぐ上に声の主はいた。
「邪魔をしてくれたお礼はして差し上げなくてはね」
その腕は静かに上げられた。
紗夜と歩未がソレに気づいたのは本当に偶然で、二人とも本気で神様に感謝を述べた。
「っ……危な」
「レオ、大丈夫?」
「あら、わたくしの攻撃をかわすなんて失礼じゃありませんこと?」
「いきなり、なにするのさ!」
降り下ろされた腕から現れたのは、無数の氷の刃。
紗夜達がいた場所は、無惨な姿に成り果てている。
「ご希望ならば、美しい氷のオブジェにしてさしあげましょうか?」
「慎んで遠慮いたします」
紗夜達の前に現れたのは、黒い一角獣に跨がった女性。魔法使いが持つような杖を手に、悠然とこちらを見下ろしている。
「あなたは誰なんですか!?」
バカ正直に受け答えする紗夜とは違い、歩未は既に臨戦体勢に入っている。
「はじめまして、お嬢さん方。わたくしは……」
「てか…、なにあの恰好」
「す、凄いよね。色んな意味で」
2人が驚くのも無理はない。
目の前の女性は派手を通り超して、紗夜の感覚からすれば『変』というのが正しい格好なのだ。