月の民の唄
□水清ければ月宿る
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「全然、状況がつかめないんですけど?」
「この近くの村に寄ったら、わたしたちがこっちの世界で発見されたのと同じ位の時期に、変わった服を着た女の子を保護してくれたって人に会ってね、森に用事を頼んだって聞いて慌てて追いかけてきたの」
「…そっか。…で、こちらは?」
「僕はフェイト。今まで居た銀髪がアークで紗夜と一緒に落ちてきたのが黒耀。紗夜達と一緒に君たちを探していたんだ」
「浅葱紫乃です。よろしく」
賑やかな周囲を無視して、二人は握手を交わす。
「詳しい話はまたあとでね」
「なにがどうなってんだか…」
言いつつ視線を騒がしいほうに向けると、あれほどいたモンスターも、ほぼ片付けられていた。
否、最後のモンスターもすぐに絶命した。
「終わったー!あー疲れた疲れた」
「てめぇはたいして何もしてねぇだろうが」
その場にへたり込んだ紗夜の緊張感のないセリフに、呆れながら黒耀が呟いた。
「したでしょー!?銃撃ったり銃撃ったり銃撃ったり!」
「それだけかよ!無駄玉撃ちやがって、爆煙で自分からも敵を見えなくしてどうすんだ!」
「はいはい、すいませんでした」
「てめえ、喧嘩売ってんのか?」
「黒耀、だめだよ!!」
少し離れた所からフェイトに咎められると、不服そうに舌打ちをして黒耀は剣を仕舞う。そして、へばっている紗夜を置いて、さっさとアーク達に合流してしまった。
紗夜もひとつため息をつくと、立ち上がってみんなのもとへ向かう。
たとえ自分から敵が見えていなくても、アークと黒耀から敵が見えて、敵の目くらまし程度になればと思った───とは、なんとなく悔しくて言わなかった。