月の民の唄
□冒険の始まりと森の歌
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見渡す限りの草原が広がる石畳の街道を紗夜達は歩いていた。
「平和だねぇ」
「ね〜」
「いや、平和すぎじゃね?」
「今まで忙しかったから丁度良いと思うな」
小さな花が風に揺れ、地平線まで緑が広がる光景はあまりにも平和で、歩未の言った通りに今までの忙しさを忘れさせてくれるものだった。
「このまま歩けばお昼には町に着くね」
紗夜が地図を確認しながら歩未を振り返る。
「着いたら調査開始?」
「そうだね。そうしようか」
紗夜の意見に歩未が賛成し、また楽しく歩き始める。
「にしても子供達が消えるて、なんでだろうね?」
「それを調べに行くんだけど」
「初めての冒険なのに、いきなり大問題だと思わね?」
紫乃は頭の後ろで手を組む。何を考えたか、それを真似しながら七緒がほんわりと洸の方を向く。
「もっち〜、消えちゃわないでね〜」
「七ちゃん、そんな怖いこと言わないでよぉ」
「案外オバケの仕業だったりして」
「うぇ〜!?」
紗夜がそう言うと、お化けや幽霊などの怖いものが苦手な七緒は、慌てて紫乃の後ろに隠れてしまう。
「なんであたしを盾にするわけ?」
「紫乃さんなら大丈夫」
「何が!?」
「信じてるから!」
「何を!?」
そんなやり取りを繰り返している間に、目的の町はその姿を徐々に大きくしていった。