じわじわと広がるその温もりは、止められそうに、ない。
繋がる温度
「いちいち大袈裟なのよ」
「オメーこれでも一応、18歳のレディなんだろ?レディに夜道の1人歩きは危険だぜ?」
「これでも一応ってどういう意味よ?」
「あ、いやそれは…」
今日は大学で実験があるから、遅くなると博士に言ったはずなのに。
実験を終えて、大学の正門を抜けたら、なぜかそこには制服を着た良く見知った人物が立っていた。
「風邪、引いても知らないから」
「え?宮野が治してくれるんじゃないの?」
「…」
当然だろと、言わんばかりの表情で、瞳をぱちくりさせながら、何の悪びれもなくこちらをむくそのケロリとした顔に、志保は盛大な溜息を洩らした。
「博士も本当に大袈裟なんだから。」
「え?」
「工藤君に、心配だから迎えに行くように言ったの、博士なんでしょ?」
「…ま、まぁな」
ポリポリと頬をかきながら、新一の視線がふらふらとさまよう。
そんな様子を知ってか知らずか、突然、新一の手に柔らかな温もりが加わった。
「手」
「へ?」
「冷たくなってる」
あまりに唐突な志保の行動に、平成のホームズと呼ばれた名探偵の思考が完全に、止まった。
柔らかなそれでいて穏やかな温もりを持った両手に、優しくふんわりと包み込まれる。
そこに、熱い吐息が何度も吹きかけられれば、手が、足が、頭が、胸が、じわじわと温かくなる。
「お礼よ。一応、待っててくれたんだし」
むすっとした顔で、明後日の方向を見ながら、ポツリと呟く志保。
「ちょっと…聞いてるの?」
頬をうっすらと桃色に染めて、ぼうっと立っている新一に、志保の不機嫌そうな声が響く。
「お、おう」
「早く帰りましょ。博士が心配してるわ」
新一の手を包み込んでいた柔らかなそれが離され、くるりと志保の背が向けられる。
途端に外気の寒さに手がさらされて、温もりが少しずつ、消えていく。
しばしその手を不思議そうに見つめて、開いたり閉じたりしながら、志保の後ろを歩いていた新一が、ふいに隣に並んだ。
ちょっぴり冷たくなった志保の手を、ぎゅっと握りしめて。
「ちょっと何」
「いいから」
しょうがないんだからと呆れたように呟きながらも、きゅっと握り返された手から、じわじわと温もりが広がって。
自分を包み込んでくれる、白くて華奢で温かい、この手を離したくないと、そう強く思った。
後書き
最後まで読んで下さりありがとう御座います。
皆さんお気づきの通り、私にしてはレアな甘めの新志です(笑)
大学生と高校生のカップルが急に書きたくなって、書いちゃいましたv
手をつなぐっていう行為は、単純なようで一番難しく大切な行為なんじゃないかなーと、個人的に思っています^^
まぁ私の恋愛談議はおいておくとして(笑)
拍手ありがとう御座いました!(深々)
皆さまの拍手を糧にして、これからも日々精進して参りたいと思いますっ!
ではではここら辺で。
2009年1月23日
アイ