applauso
□浮気なコロン
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すれ違い様に香ってきた男性用コロンに覚えがあり、つい視線がその男性を追って動いてしまった。
自分の背後を歩いて行く彼の後ろ姿は、どちらかといえば派手な外見の若者で、その右手には無骨なシルバーアクセサリーもはまっている。
黄色がかった茶色の髪の毛の根本からは元々の色が覗いており、どことなく安っぽい印象を受ける。
そういえば思い出した。
学生時代に同じ学科にいた人がつけていたコロンだ。
「……どこ、見てるの?」
ぐいっと片方の腕が引かれ、気づけば眼前にジーノの端整な顔が迫っていた。
今にもキスをされそうな距離に恥ずかしくなって逃れようとしたが、もちろん逃れられる筈もない。
私がじたばたともがいているその間も、ジーノは実に悠々と構えて、私の返答を待つように私を除き込んでいた。
彼の唇からもう一度、まるで尋問でもされているような圧力をもってついさっきされた質問が繰り返されると、意識もしていないのに私のそれが僅かに開き、言葉を紡いだ。
「あの……さっきの人のコロンに……覚えがあって」
「隣に僕がいるのに、あんなに安っぽい男に目移り?浮気はダメだよ」
「浮気なんて……!」
「悪い子にはお仕置き」
私の微かな反論など聞く耳もたず。
僅かに残っていた唇の間の隙間も、抵抗むなしくジーノによって埋められてしまった。
(拍手ありがとうございました^ ^)