テニスなお姫様もどき2
□第34話 ただいま
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梓はゆっくりとそれを受け取る。
梓「…そ、それではいただきます」
和巳「一気にいけよ」
梓は少し警戒した面持ちで小瓶の中の液体を見つめ、そして一気に飲み干す。
梓「ぐやあああ!」
梓の言葉にならない悲鳴は飛行機中に響き渡った。
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夏希「うるさい」
梓の大きな悲鳴を聞き、不機嫌にそう呟く。
丸井「何かあったみたいだな」
夏希「知らね」
恵「夏希ちゃん。俺、梓ちゃんの様子見てくるよ」
夏希「あ、はい…」
恵は梓の座っている前方へ向かう。
夏希「ちっ、あの馬鹿が。恵さんの手をわずらわせやがって」
宍戸「けどよ、さっきの悲鳴尋常じゃなかったぜ」
恵がいなくなったことにより壁がなくなった宍戸がこちらに話し掛けてくる。
夏希「まあ、確かにそうだったが、関係ないだろ…」
恵「梓ちゃん!!」
心配そうに梓の名を叫ぶ何人かの声が聞こえる。
夏希「……仕方ねぇな」
ぶつくさと文句を言いながらも夏希は立ち上がり、梓の所へ向かう。
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梓が悲鳴を上げて気絶したのを斜め後ろの席から静かに見守っていた由良は、近付いてきた夏希に話し掛けた。
由良「あら、夏希。梓が心配で来たのね」
夏希「違う」
夏希は完全に否定する。
由良「本当かしら…?」
由良はからかうように、にやりと笑う。
夏希「それで?
どうしたんだよ」
夏希に説明を急かされ、由良はやれやれと言った様子で語る。
由良「簡潔に言えば、梓がお兄様の薬を飲んだのよ」
夏希「あ…、あの怪しげな薬を?」
桑原「ああ。何かあいつ変だっただろ、それで和巳さんが、この薬で治るだろうって…」
由良の逆側から桑原が補足してくる。
由良「大丈夫よ。
気を失っているだけみたいだから」