「ねぇ―――…貴方はだぁれ…?」



青い空。

白い雲。

静寂な森の中。

静かな空間に私の声が異様に響いた。

穏やかな世界に響き渡るのは私の小さな呟き。

私はいつも同じ夢を見る。

貴方の世界なのか私の世界なのかはわからない。

誰が創り出したであろう世界で私と彼は出会った。

青、蒼、碧。

いや、もう少し深いアオ。

藍色、藍青(らんせい)。

群青という言葉が一番相応しいに違いない。

色鮮やかな群青の髪、左右比対照のアオとアカの瞳がとても印象的な彼。



「―――クフフフフ…」



不思議な笑い方をする彼。

何やら楽しそうに愉快そうに喉の奥で笑っている。

口元は笑っているが、何を考えているのかわからない人。

私はただ彼を見つめる。

貴方の比対照なアカとアオに目を奪われる。

……囚われる―――…っ!

頭に過ぎる。

何に囚われるかわからない。

何が迫っているかわからない。

私はわからない不安に駆られ、恐怖した。



「迷い込んだのですか…?お嬢さん」



迷い込んだ…?

私を“お嬢さん”と呼んだ彼が言った意味がわからず、首をこてんと傾げ、考え込む。

何らかの不安に駆られながらも彼の穏やかな声色に拍子抜けした。

でもその声色に違和感を覚えたのは言うまでもない。

そんな私を見た彼は少し驚いたような顔をした後、また口元を引き上げながら、また不思議な笑みを零す。

………。

何だろう…この感覚は……。

何だろう…胸が騒ぐこの感覚は―――…

私はさらに不安に駆られ、恐怖している。

アカとアオに囚われちゃいけない。

近づいちゃいけない…

そんな気がした。

でもその色は私が持っていない色だから目を奪われた。

純粋に綺麗だと思う。

だけどその色が。

だけど群青という名のアオが。

三日月の浮かぶ彼の口が。

不思議な笑みを零す彼が。

彼の醸し出す雰囲気が。

彼の存在自体が。

印象的過ぎて違和感を覚える。

とてつもない恐怖感は背筋を通り越して、身体全体が拒絶してゾクリと何かが走った。

何故かわからない。

本能がシグナルを発する。

今までにない危険信号は頭に響き渡った。

ガタガタと震え出した身体は止まることはない。





私は知らなくていい世界に足を踏み入れてしまったのかもしれない―――…







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