はなし
□役割
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女性はそれは丹念に真っ白な布で剣を拭いていた。拭いても拭いてもとれない血はとても光った。
「そんなことは宮遣いにでもやらせておけばよかろうに。」
ふと女性の真後ろから男性の声がした。
「貴方様」
女性は一心不乱に動かしてた手をとめ後ろを向いた。
「いいえ。恐れながらこの事は私の役割だと…」
「なぜじゃ」
女性は刹那目を閉じ考え込んだ。が、凛と視線を男性に向けた。その視線には敬意と母性があった。
「貴方様の剣には沢山の方々の魂が宿られてましょう。……それを慰めるのは、私の役でありたいのです。」
目をまた閉じ、血生臭い魂の宿り場に1つ接吻した。
そして女性はゆるゆる立ち上がり、もうこんな時間おややにごはんを。と呟きながら大間を出て通路に出た。剣はだいぶ赤色が落ちていた。
「……事柄に置いてあやつは間違えとりゃせんか、」
一人の剣士はため息を落とした。