第二次中間報告
―悪性変異―

腕輪の力で『スケィス』を倒した『カイト』。
しかし、それは友人『オルカ』を意識不明から救うどころか、さらに恐るべき敵『クビア』の誕生を招く結果となった。

ヘルバ「クビア……」

この『カイト』の行動は、当時CC社のシステム管理者だった『リョース』から危険視されることになる。

リョース「私は…リョース。」

『カイト』にしてみれば友人を助けたい一心のこと。
しかし腕輪の力は、一般プレイヤーの善意の代表者である『バルムンク』や、『The World』を保守するシステム側にとっては、ネットゲームにおいて最も憎むべきチート、すなわち不法改造と何ら変わりのないことだった。

リョース「が、それとは別に――これ以上の状況悪化を防ぐためにも、君のPCを破棄してもらう必要がある。」
カイト「このキャラを捨てろと?」
リョース「君のPCは、ソフトウェア使用許諾に反している。不正な効果のインストール……身に覚えがあるだろう?では、デリートさせていただく!」
ヘルバ「待ちなさい!」
リョース「ヘルバ!」

しかし『カイト』のPCには強力なプロテクトがかけられており、システム側であってもアカウントを削除できなかった。

ヘルバ「どうなるかしら?」
カイト「ぼくは、そんなことはしない!」
ヘルバ「そうね。ぼうやはバカじゃない。バカな石頭は、この男。何がどう作用するか分からないのに、消してしまっていいのかしら?そもそも、本当にデリートできるの?」
リョース「……」
ヘルバ「ぼうやのPCには管理者も干渉できない強固なプロテクトがかかってる。レアなアイテムを偽ったワクチンを用意してはみたものの……管理できないものは排除してしまえ……石頭のやりそうな事ね(笑)」

ハッカー『ヘルバ』の仲介で、『カイト』はいったん『リョース』の監視下に入ることを了承する。
一方『カイト』の力に興味を持つ『ヘルバ』は、『オルカ』の意識不明と『黄昏の碑文』との関連を教える。
『黄昏の碑文』は『The World』の世界観のベースになったとされるネット叙事詩だ。
著者エマ・ウィーラントは故人であり、散逸した原典のテキストをめぐっては、その真偽と内容をめぐってプレイヤーのあいだで常に物議をかもしていた。

ヘルバ「この世界が"黄昏の碑文"を元にデザインされていたとしたら……そこに何かヒントが――」
リョース「くだらん。」
ヘルバ「リョース。」
リョース「なんだ?」
ヘルバ「システム管理の責任者にあたえられるそのコード名――碑文に出てくる"光の王"の名前だって知ってた?」
リョース「そうなのか……?」

『カイト』は『リョース』の指示でウイルス汚染エリアの調査に向かった。

ブラックローズ「うわぁっ!また、なんか出たぁーっ!」
カイト「こいつが……こいつが元凶?」

そして第二相『イニス』を撃破する。
『スケィス』『イニス』――そう。
これらこそ、我々『プロジェクトG.U.』が研究する『モルガナ因子』なのだ。
第二相『イニス』を倒し、『カイト』は分割された『アウラ』のセグメントの1つを解放した。
続いて『アウラ』からのメールを頼りに訪れたエリアで、『クビア』と遭遇する。

カイト「あ……」
ミストラル「うそぉ……さっきの話、ホントだったんだ……」
カイト「わかってくれた?」
ミストラル「それにしてもこの子……きれいだけど……なんか……」
「なんか、うまくいえないんだけど、生きてない………」

ミストラル「うわっちゃっちゃっ……なぁんじゃこりゃ〜〜〜!?」
カイト「これが――?」

腕輪の力で、いったんは『クビア』を退けた『カイト』。
彼は『アウラ』を解放することが、すべての謎を解決する道であると考え、決意を新たにする。
なんということだろう……!
この『カイト』という少年は、我々『プロジェクトG.U.』が多大な人員と時間、予算を投入して積み重ねてきた研究と同等以上の成果をたった一人で成し遂げようとしていたのである。
なんの知識もなく。なんの助けもなく。ただ勇気という心の剣だけをもって……。
『カイト』は『黄昏の碑文』の謎を追って、情報屋の『ワイズマン』とコンタクトを取った。
『ワイズマン』の助力を積み、『黄昏の碑文』と8つの「禍々しき波」についての知識を得た『カイト』は不正規サーバーであるネットスラムを訪れる。
『The World』であって『The World』でない場所――そこはハッカーと、放浪AIと呼ばれる不正なAIキャラクター、ジャンクデータを寄せ集めた、ならず者たちの「たまり場」だった。

タルタルガ「ヘルバをお探しか?」
カイト「はい」
タルタルガ「ヘルバから多少は聞いてはおる。『黄昏の碑文』な……ざっくり言って、それ自体は、精霊の時代が、いかにして終わりをつげたかを語るものだが……」
カイト「終わりの物語……?」
タルタルガ「さよう。しかし、テキストも散逸しておるうえに、これがえらく難解でな。まぁ、一筋縄ではいかん。」
ブラックローズ「あのぅ……さっきから気になってたんだけど。ここの人たちって――他では見かけない姿ばっかりだけど?」
タルタルガ「ここは元来、失敗作と呼ばれるNPCの集うデータの吹き溜まりだった。それをおもしろがり、キャラデータをいじくりまわして、失敗作をロールするPCも集まるようになってな……今となっては、その境界もあいまいで、自分がPCなのかNPCなのかもわからなくなっとるヤツもおる。もしかすると、すでに肉体は無く、キャラデータだけが動き回っているやつさえおるかもしれん。そう……ハロルドのようにな。」

"ハッカーたちの楽園"
―Geek's Utopia―
そこで『カイト』は『ヘルバ』と再会する。
『ヘルバ』こそネットスラムの作り手であった。
そこで『カイト』は『The World』のオリジナルクリエイター、ハロルド・ヒューイックの目的を知る。
さらには『The World』の根底に潜む、ハロルドとは別の「意志」――だが、そこに『バルムンク』と『リョース』が現れる。

ヘルバ「『黄昏の碑文』……ぼうやたちもそこにたどりついたわけね。あら、珍しいお客さんだこと。ネットスラムを代表して歓迎するわ。楽園へようこそ……!」
カイト「? バルムンク……」
ヘルバ「あなたはリョースについたわけね。偉そうに言ってた割にもろいもんね。」
バルムンク「オレはお前らとは違う!」
ヘルバ「ぼうやの後をつけ回すなんて、フィアナの末裔の名が泣くわよ。」
カイト「バルムンク――ぼくたちを利用したのか?」
バルムンク「秩序を取り戻すためには、しかたのない事だ…!」
ヘルバ「秩序?世界が欲する秩序と、あなたが望む秩序――あるべき姿は、どちらかしら?」
リョース「むろん、私が望む秩序だ。」
ヘルバ「真打ち登場。役者がそろったってわけね。」
リョース「無駄口は、そこまでだ。やはりお前たちはこの世界にとって危険な存在でしかない!消えてもらう!」

奇しくも『リョース』とは、『黄昏の碑文』に登場する光の王の名前であり、『ヘルバ』とは闇の女王の名前であった。
違法なネットスラムの排除を狙うシステム管理者『リョース』と、『ヘルバ』との対立が起きた最中、第三相『メイガス』の出現によって事態は急変した。

ブラックローズ「葉っぱ……!?」

腕輪の力で、かろうじて『メイガス』を撃破した『カイト』。
しかし次に彼を待っていたのは、データの崩壊したタウンの姿だった……。

ブラックローズ「な……なんなのよこれ……嘘……よね……」

第二次中間報告
作成者 番匠屋 淳

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ