めいん。

□●叶わない夢、叶えない想い
1ページ/3ページ



『叶わない夢、叶えない想い』




昔。



それこそ、物心がついたばかりの幼い頃。




ダリルシェイドで、はぐれてしまったことがあった。




確か、港へ行った帰りだったと記憶している。
もちろんオベロン社の者も一緒だったが、『何か』に目を奪われてしまい、気付いた時には一人になっていた。



その『何か』は思い出せない。



しかし、おそらく他愛もないものだったのだろう。
僕は幼かったのだから。




ダリルシェイドは大きな街だ。
まだ一人で街を歩いたことがない子どもにとって、そこはまるで迷路のようだった。



立ち並ぶ建物。



行き交う人。



何もかもが恐ろしく見えた。




そして、この世に自分を知ってる者などいないと錯覚する感覚。





――僕は独り。





歩き出すしかなかった。
恐怖に押し潰されそうだったし、何より変な期待をしている自分が嫌だった。




どこかで『あの男』が捜しに来てくれないだろうか、と考えていた。

しかし、現われないことも判っていた。



待っていても、考えていることを証明してしまうにすぎない。

だから歩いた。ひたすら歩いた。
奥歯を噛み締め、黙々と歩いた。




結局、運良くオベロン社の店に辿り着け、そこから屋敷に送ってもらえた。


社員はうろたえていたが、やはりあの男は普段通りだった。
怒るでもなく、心配するでもなく、いつもと変わらぬ表情。

まるで無関心のように。









強くなろうと思った。

誰も助けに来ない。
それならば、自分で何もかもやるしかない。

だから、力が欲しい。



そう思った。










次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ