めいん。
□◇私を不安に出来るのは貴方だけ
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『私を不安に出来るのは貴方だけ』
天気のいい日曜の朝。
清々しい空気が広がる。
しかし、民宿『炎』の居間だけは澱んでいた。
「…まったく、どれだけ散かせば気が済むのよ」
ゴミがあちらこちらに散乱し、ちゃぶ台は何故かひっくり返っている。
そして死体のように転がる男共。
昨夜は馬鹿騒ぎする彼らを放って、アンナは早々と眠りについた。いつも通りの時刻に起き、居間に行くとこの惨状だ。ため息もつきたくなる。
「あとで叩き起こして、片付けさせないと」
アンナは足元にあった空き缶を拾い上げ、ポイっと投げた。それはホロホロに当たったが、彼はピクリと動いただけだった。
…ふと、この場に葉がいないことに気が付いた。
一晩中騒いでいたから、ここにいるはず。
「葉?」
呼んでみるが返事はない。
ここから見える台所にも姿は見えない。
それを頭で理解した瞬間、自然と体が動いていた。
2階へ上って葉の部屋へ。
布団には誰かいた形跡はない。
下へ降り風呂場へ行くが、脱衣所には姿どころか服もない。念のため浴室も覗いたが、やはりいない。
男子トイレの扉を勢い良く開けて中を確かめるが、その行為は無駄に終わった。
確認するごとに広がる何か。
葉がいない。
葉がいない。
葉が―――
ガラガラガラ
玄関の戸が開く音がした。
慌てて玄関に向かうと、そこには葉が。
「オウ、アンナ。起きてたんか」
いつも通りのユルイ笑顔が向けられる。
「アンタ、どこ行ってたの」
「へ?朝のロードワークだろ?」
「宴会のあとは、いつもサボってたじゃない」
「そうだけど、昨日は夜もサボっちまったからなぁ」