めいん。

□●それは出会う前の
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『それは出会う前の』




朝起きて支度をする時から、勝負は始まっている。

一分の隙も無いように細心の注意を払う。



完璧な『日下部まろん』をつくるために。







外は危険だ。
一瞬も油断出来ない。


いろんな『目』が私を見張ってる。



だから、いつも元気で明るくて強いまろんでいなくちゃいけないの。

判ってるよ。
これは強がりだ。






でも、そうしないと立っていられないから。







私は強い。
私は強い。
私は―――







そうして気付くと、いつの間にか家に着いてる。

留守電のボタンを押すと


『用件はありません』



と、いつも通りの返事。




これを聞いた瞬間、ふっと力が抜ける。緊張が解ける。


今日も、ちゃんと出来たよ…。







「………あ…れ…?」




泣いていた。

ぽろぽろと涙が落ちてくる。




「ど…したんだろ…?」






おかしいな。
いつもの『私』が出来たはずなのに。


ちょっと疲れちゃったのかな?



あぁ、ダメ。
とまらない。





「………っ」






ごめんなさい。
ごめんなさい。




明日には、いつもの強い『日下部まろん』に戻るから。



だから、今は少しだけ。









END







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