めいん。

□●叶わない夢、叶えない想い
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今さら誰かを求めたりしない。
助けなどいらない。

独りでいると決めたから。

だから―――









「あーっ!いたいた!やっと見つけたわ、リオン!」




洞窟に響いたのは、聞き慣れてしまったハスキーボイス。
場所を考えない声量だったため盛大に反響し、かなりうるさい。




「…何をしに来た?」

「決まってるじゃない。落とし穴に落ちたアンタを捜しに」

「それはお前のせいだ」



宝箱にコイツが飛び付いたせいでトラップが発動。
犠牲になったのは何故かコイツではなく僕だった。



「…えーっと、そのぉ…」

「それに僕は先に行けと言ったはずだが」



幸い、その落とし穴は、ただ下の階に落とすものであって、また進めばいいだけの話だった。

だから構わず行けと命令した。後で追いつけるのだから、待っているのも、捜しに戻るのも無意味だと。



「文句ならスタンに言ってよね。捜しに行くって聞かなかったんだから」


その様子が容易に想像出来る自分が嫌だった。
もっと強く言っておくべきだったと、深くため息をつく。




「ところでアンタ」
「!!」



いきなりルーティが顔を覗き込んできた。
あまりの近さに驚いてしまう。



漆黒の髪、深い紫色の瞳。

僕と同じものが目に飛び込んでくる。



「な…なんだ」


思わず一歩引いて、目を逸す。





「どっか痛いところある?」



「は?」



考えてもみなかった言葉に、一瞬頭が白くなる。



「ケガとかしてないかって聞いてるの」

「……別に」

「そっ。ならいいわ」




そう言って、自然に笑ってみせる。


その笑顔があまりにも優しく見えて。

優しく、見えて――






「あの程度で怪我するわけがないだろう。見くびるな」

「はいはい、そーですか」



そんだけ悪態吐けるなら平気よね、と呟いた声はしっかりと耳に届いたが、僕は何も言わなかった。




「さっ、他のみんなと合流しましょう」



くるりと方向を変えて、ルーティは歩き出す。

しかし、僕はまだ動けなかった。








思い出したのだ。

あの時、何に見とれてしまったのか。





視界に入って来たのは、そう。
楽しそうに笑う姉弟。







「……本当に幼かったのだな」

「ん?何か言った?」

「言っていない。さっさと案内しろ」

「あ゛ー!!やっぱり捜しに来なきゃよかったわっ!」










もしもあの時、お前が側にいたのなら。



今日のように捜しに来てくれたのだろうか。

大きな声で、僕の名を呼んで。






――みつけたわ、エミリオ!










END



→あとがき





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