めいん。
□◇ありがとうの気持ち
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「ふわぁ〜…」
その日、スタンは自然と目を覚した。
「……ん〜?」
何かがおかしくて寝ぼけ眼で頭を掻く。
「…今何時だ…?」
「もうすぐお昼よ」
独り言のような問いに返事が返ってきた。
「ルーティ」
「アンタって起こさないとホント際限ないわね」
「え…?あっ!ごめん!」
やっと頭が働いたスタンは慌ててベッドから出ようとした。
「あー、いいのいいの。今日は特別」
「へ?」
あまりにも不思議そうな顔で見てくるので、何だかルーティは嬉しくなった。そして10代に戻ったような笑顔を浮かべてこう言った。
「父の日のお祝い!」
「…で、結局いつも通りじゃない」
子ども達と話し合って、父の日はスタンの休日にしようということになった。だから今日は誰もスタンを起こさず、好きなだけ寝てもらった。
自由な時間を貰ったスタンだったが、有効な過ごし方が思い付かず、いつの間にか子ども達と遊んでいたのだった。
「スターン!次、私!私!」
「よし、任せとけ!」
小さい子を軽々と肩車していくスタン。その後ろには順番を待つ小さな列が出来ている。
「まっ、楽しそうだからいっか」
ルーティは半分呆れて、半分微笑ましく、その様子をしばらく眺めていた。
* * * * * * * *
散々スタンに遊んで貰った子ども達は寝静まり、ルーティは洗い物を、スタンは少しだけお酒を飲んでいた。
「まさか父の日を祝ってくれるなんて思ってなかったよ」
「お祝いになってたかどうか疑問だけどね」
苦笑いしつつ、洗い終えたルーティはスタンの向かいに座る。
「もちろんなってたさ!時間気にしないでみんなと遊べたし、マーボーカレーはうまかったし、こうして久し振りにお酒も飲めた。言うこと無しだよ」
予想以上の喜びようだ。
子ども達もスタンの様子を見て嬉しそうだった。
「じゃあ…成功、かな?」
「ん?」
「私の初めての父の日」
父の日とは関係なく、スタンがどうしたら喜んでくれるか考えていた。それが父の日らしくなくてもデュナミス孤児院なりの『父の日』になればいい。
するとスタンは屈託ない笑顔で、
「大成功だよ」
と言った。
その表情と言葉だけで充分だった。
明日からはまた、いつもの一日。
だけど感謝の気持ちを忘れないで。
いつもの一日があるのも、貴方のお陰。
end
→あとがき