庭球

□ワザとです
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学校が終わり、帰ろうとすると生徒玄関で同じクラスの柳くんが帰る様子もなく立っていた。


「柳くん?」


「みょうじか。」


「部活はもう引退したんだっけ?」


「あぁ。」


「これから帰るんだよね?」


「そのつもりだが、傘を忘れてな。」


なるほど。今は凄い雨降ってるもんね。


「じゃあ私の貸そうか?」


「みょうじの分がなくなるだろう?」


「私は大丈夫!」


「みょうじがオレに気を使っている確率88%。」


「えっ!?」


「違うか?」


「えっと、…合ってます。だって柳くんに風邪ひいてほしくないし、」


「それはオレも同じだ。」


「うーん、じゃあ一緒に帰る?柳くんが良ければ。」


「オレは構わない。」



柳くんは私から傘を取ると持ってくれた。
私が送ると言ったのだけど断られた。優しいなぁ。



「柳くん受験勉強どう?」


「まあまあだ。みょうじはどうだ?」


「うーん、古典が苦手なんだよね。何言ってるか全然分かんない。」


「古典は得意だから教えられる。」


「ほんと?じゃあ今度質問しても大丈夫?」


「あぁ。」


「ありがとう。
…、そういえば今日の降水確率90%だったよね?」


「そうだな。」


「なのに傘忘れたの?」


「あぁ。」


「…、柳くんが傘をワザと忘れた確率100%!」


「違いない。」



柳くんが薄く笑う。



「なんで?」


「そこは想像に任せる。」


「えー、…難しいです。」


「ヒントは、今の状況から推測するのがいいだろう。」


「今の状況?」


「あぁ。」


「…、…。」


「どうした?」


「な、何でもありません、」


「顔が赤いが?」


「なな、何でもありません!」


「おそらく、みょうじが推測した考えで合っている。」


「え!?」


「さらに赤みを増したな。」


「っっ!?」



end

(自惚れた考えしかないんだけど…。)
(自惚れてくれるとオレは嬉しいな。)
(っ!?…、なんか余裕だよね、柳くん。)
(これでも緊張しているぞ?)
(そうは見えません。)

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