小説

□ケーキ事件簿 File:XX
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「あああああぁぁぁ!!!!!!」



 それは唐突に起きた。



「ぃ、いきなりどうしたんだ?
 そんなデカい声出して……」
「………ゎ、私の……、
 私のケーキがなくなってるんだよ!!!」





 ケーキ事件簿 File:XX





 突然泣き出しそうな勢いで
 そう告げてくるカエデ。
 あちこち探し回りながら
 「ない!ない!!」と叫んでいる
 様子を見ていると慌ただしさを感じる。
 しかし、それを傍観する俺としては
 ケーキ一つでそんなに慌てるものか
 と疑問を抱いてしまう所でもある。
 そんな事を考えつつバトル講座の本を
 読んでいると、後ろから
 モミジさんの声が聞こえてきた。



「あら。もしかしてそれって、
 昨日コガネデパートに行った時に
 何時間も並んでやっと手に入れた
 あのケーキの事?」
「そうなんだよ!!!
 せっかく、やっとの思いで
 買えたっていうのに……!!!」



 なるほど。
 それだけレア物のケーキなら
 あれだけ慌てているのにも納得出来る。
 が、探せど探せどケーキはその姿を
 見せてくれない。
 カエデからも諦めの表情が出ている。
 そろそろ探すのを手伝った方が
 いいのだろうか。

 ――と、思った時だった。



「――話は聞かせてもらった」
「だ、誰だ!?」



 突如響き渡った声に驚きを隠せず
 そのまま声のする方を見る。
 するとそこに立っていたのは、
 一人の男性と一人の女性だった。



「俺の名はリオン……この事件は、
 俺が解決してみせる!!」
「いや確かに事件と言えば事件だけど
 事故っぽい雰囲気も感じるんだが」



 リオンと名乗る男性に
 ツッコミを入れつつ何者なのか
 問おうとする。――が、



「と……こんな感じでいいのか?ミレナ」
「うん!バッチリだよ♪
 探偵みたいでカッコよかったし!」
「ぁ、ありがとな……」
「って探偵じゃないんかい。
 登場の仕方からホントに探偵かと
 思っちまったじゃねぇか。
 それと、ちゃっかり二人の世界入るな」



 見ているだけで軽く苛立ちが募る
 光景を前に壁を作りたい心境の中
 刺のある物言いで言うが、
 さすが二人の世界。
 皮肉がどうにも通じない。



「ホントに探し出してくれるのか!?
 頼むよ……あのケーキ買うのに
 どれだけ苦労した事かっ……!!」



 しかもカエデまで
 (ある意味)乗り気になってるし、
 よく見るとモミジさんも
 彼女が面白いと感じた事が
 始まる予兆を伝える満面の笑顔を
 見せている状態だ。

 どうなっても知らないぞ?全く…。




 
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