モノクロ世界

□つながる
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……あれ?私、どこで道を間違えちゃったんだろう…


「ぅっわぁーっ郁、すっごく似合ってる!!そこら辺の男より全然かっこいい!」

「あはは…ありがと」

今どういう状況かというと、輝羅は膝上タイプのワンピースを着ていて、

郁は何故か……何故か、スーツを着てるの。まぁ、男役をしてるから良いんだろうけど、まかさ…スーツとくるとは思ってなかった。
んで、長い廊下を歩いてるんだけど…


「輝羅ってお嬢様だったんだね」

「えへへ…皆に見えないって言われるんだよねー失礼しちゃうっ!
あのね、お父様が厚生労働省の大臣を、お母様は女優をしてらっしゃるの」

「へぇ…初耳だなぁ…
あ、和やかなのはここら辺までにしとく??」

10メートル程先に突き当たりが見えた。そこには大きな扉があった。

「…そだね」

近づくと、扉の傍に立っていた人――このビルの人だろう――が見計らって開けた。
それにより向こうの景色が見える。
眩しく感じ、一瞬目を瞑った。



そこにはソファに腰をかけている青年と立っている男性とがいた。

(輝羅の相手かな?)

郁は青年の方を見た。
すると青年も郁の方を見て、目がぱっちり合ってしまった。
なので反射的に郁は目を逸らした。


…銀髪銀目。ちょっとした癖っ毛。鋭いようで懈そうな瞳。
その中には何が映っているのだろう…。
そして何故だか…蓮を連想させる。
どうしてだろう?見た目は色しか同じとこはないはずなのに…。


「輝羅」

郁のそんな考えは低く、よく通る男性の声によって中断された。
その男性、輝羅の父親は黒髪に黒縁眼鏡と、堅実というものを感じさせる雰囲気であった。


「久しいな」

「…はぃ」

それは郁が知っている“家族”というものとは違っていた。
こんなピリピリした空気を感じるなんて…
輝羅は緊張なのか、声が少し震えている。

「暫くの間顔も出さず、すみませんでした」

…暫く?入学は一週間くらい前だよね?
…ってことは、入学する前、家にいる頃から2人はあまり会ってなかったってことかな?

「…そちらは」

その声にはっとしてそっちに顔を向けると、輝羅のお父様の視線が郁の方を向いてた。
少し驚いた後、心を落ち着かせてから口を開いた。

「お初にお目にかかります。華王郁と申します」

「初めまして。亜憂輝羅の父、亜憂潤です。
…輝羅、お前が言ってた男だな?」

じろじろ見られてあまりいい気はしない。

「はい、そうです」

輝羅は、しっかりとそう言った。
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