モノクロ世界

□ひとつ残ったペットボトル
1ページ/7ページ


ダムダムダムダム……

キュキュッッ


「パスッ!」

シュッッ



只今、体育館ではバスケットボールの練習試合が行われている。
対戦しているのはこの会場となっている高校、純星学園と隣の地区の武田学園だ。
スコアは多少純星学園優勢だ。

ピーーッッ

そして、前半戦の終わりを告げる笛の音が体育館内に響いた。
選手は談笑しながらベンチの方に帰ってゆく。
互いのプレーについて「ナイス」などと、軽く感謝する声が多々ある。
だが、その中で一人だけ何も誰とも話していない人物がいた。
それは、人が近寄ってこないというよりも、近寄ってくるなというオーラを放っていると言った方が正しいだろう。
その人物、霧峰楼は白いTシャツの首回りのすその部分で、流れる汗を少し拭いながら歩いていた。
その表情は多少不機嫌そうに見える。
まぁ、不機嫌そうな表情はいつものことなんだが今日はそれにも増してだ。


「楼ーー…。」

「…?なんだ、お前か」

すると、体育館の扉にもたれかかっていた輝羅が帰ってきた楼に話しかけた。
こんな風に俺に自然に話しかけてくるのは、輝羅だけくらいだろう
と、楼はふと思った。
他にもいるにはいるが、多少負の感情が混じっているように感じる。
輝羅の樣に、ただの純粋な気持ちのみで近付いてくる奴はきっといないと思う。

今も、これからも…
こいつがいる空間は温かくて…
なぜか嫌いじゃない。
…いや、「なぜか」なんて付けたのはただ素直に認めるのがこっ恥ずかしかっただけで、好きなんだ。
この優しい空間が好きなんだ。


「楼、いい加減機嫌治してよー…」

輝羅は眉を垂らし、頬を大きく膨らまして言ってきた。

…別にこいつに当たった記憶は無いんだが…
まぁ、機嫌は良くはないけどな。

嗚呼、思い出しただけで面倒くさい。
さっさと帰っておけばよかったのに。


あれは、昨日の放課後のことだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ