小説

□完熟の果実をあなたに
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「ねぇねぇオプティマス〜!
これ見てよぉ!!」

「ったく、あんまりうるさくするな―

サムダック博士に借りた旧約聖書を閉じて振り返ると、
バンブルビーの腕一杯に苺が抱かれていた。
向日葵の様に鮮やかなバンブルビーに映えるその苺は向日葵を優しく見つめる太陽の様に紅く光っていた。

「おぉ!!
どうしたんだ、こんなに沢山の苺?」

「サムダック博士が市場に行ったら凄く安かったから買ったって!!
皆で分けて食べなさいって!」

ニコニコと天真爛漫な笑顔のバンブルビーは
苺達を台に乗せて
はいと私に一粒渡した。
トランスフォーマーである私の手は人間が二人乗るぐらい大きい。
人間の手ですら余る程の小さな苺は
そんな私の手の上で
砂利石の様に見えた。

「はーむっ!!
ムグムグ… んー!!
甘くて美味しい!」

手の平で苺を転がしていると、
いつの間にか私の隣で苺を頬張っていた。

「ばく、ムグムグ…
あーむっ!!」

子供の様に無我夢中に食べるンブルビーは
口と手を赤い果汁で汚し
オプティマスは溜め息をついた。

「ほら、果汁が垂れてる…」

「オ、オプティマス…?」

「っ!!!」

オプティマスは無意識に
バンブルビーの口元を舌でちろりと舐めて果汁を拭った。

「す、済まない!
む、むむ、無意識にやってしまったんだ…」

気まずそうに目線を下にそらして謝った。
バンブルビーは黙って
オプティマスの方を向いていた。

「…っ!
ほ、本当にすま―
っ!?」

急にバンブルビーが立ち上がったかと思ったら
俯いてるオプティマスの頬をしっかり挟んでキスをしてきた。
触れるだけのキスは
ほんの10秒程だったが
オプティマスには一分以上に感じられた。

「もぉ〜!
急にするからビックリしたよ!!」

「なっ!!
それは… ん!」

「それはこっちの台詞だ」と言おうとしたら
また強引にバンブルビーは口づけをした。

「ん… ハァ…」

オプティマスの口に端から溢れた苺味のオイルを拭うと
バンブルビーはギュッと抱き着いて笑った。

「僕はオプティマスに
そんなカップルらしい事されて嬉しいんだ。
だから怒ってなんかないよ!!」

顔は見えないがオプティマスには
今のバンブルビーの顔が
さっきの様に屈託なく笑っているのだと確信した。

「…その、バンブルビー」

「ん? 何??」

「…ありがとう。」

オプティマスはバンブルビーを優しく抱きしめ、
肩に頭を置いた。
改めてバンブルビーとの距離が近くなると
苺の甘酸っぱい香りが
彼の嗅覚センサーをくすぐった。

「オプティマス、
…だーい好きvV」

(熟した果実の様に甘いバンブルビー…
君が笑えば太陽みたいで
私は心からホッとする。
これからも変わらず笑ってくれ…)


END

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