小説

□心の言葉を聞いて
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「スワワ〜プ〜、スワワ〜プ〜…」

巨大な樹の枝にビーストモードの状態で
スワープは座って歌っていた。
空はよく晴れているが
森の中に居るスワープには木漏れ日程度にしか太陽を感じられなかった。

「スワワ〜プ〜…」

彼はとても寂しそうに歌っていた。
今日はプロールが来る日ではないからだ。
彼が来る日というのは決まっている。
それが分かってるだけに
余計辛い気持ちになっていた。

「スワ、スワ、
…スワープ。」

スワープはプロールを思いながら呟いた。
本当はすぐにでも言いたい、心からの『愛してる』。
名前しか言えない彼は
プロールと同じ色のオプティックから冷却水を漏らした。
伝いたいのに伝えられないもどかしさと
逢いたいのに逢えない寂しさが彼のスパークを苦しめた。

「スワープ…」

スワープは翼を広げた。
金属的で薄いその翼を羽ばたかせればプロールの居る街に行ける。
しかし、スワープはすぐ翼を畳んだ。
以前、プロールの元に行こうとして街にパニックを起こしてしまい
プロールを含むオートボット達に注意をされた事を思い出した。
その時のプロールは哀しそうな顔で島から出ては行けないと言った。
その事が頭に浮かんだスワープは咽び泣き、
トランスフォームして
必死で大量に溢れる冷却水を拭った。

「スワッ、スワァ…プ……ウッ…」

しかしどんなにオプティックを擦っても冷却水は出続け、
どうしたらいいのか解らなくて
大声で叫ぶ様に泣いた。

「スワァァアア!」

小さな森の中、
彼の甲高い声だけが大きくこだましていた。
スワープは泣きながら、
ビーストモードに戻ってダイノボットアイランド上空を飛び回った。
どうしようもない心を慰める為、
冷却水を吹き飛ばす為…
それでも嗚咽と冷却水は止まる事を知らず、
溢れる続ける想いを泣き声と重ねた。

「スワァ…
スワァプゥー…!!」

『愛しています』
今は届かない愛の鳴き声…
スワープはまた翼を羽ばたかせて
上空を飛び回る。


END

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