当サイトの世界観と歴史をまとめてみました。

まとめとはいえ、かなりの文量なのはご了承ください…。


それではどうぞごゆっくり、『ホーキネス』の世界をお楽しみ下さい。



 *   *   *



世界が始まる前、そこには何もなかった。

《無》の世界。絶対零度の暗闇の世界。

しかし、何もないはずのそこに、ひとつの意識があった。

その意識――彼女が虚無を嘆いた時、奇跡が起きて世界が生まれた。


生まれたての世界には彼女しかいなかったが、
そこには光と温度があった。

『全ての存在には名が要る』

呟いた彼女は、自らに名を与えた。

そうしてレルファナはこの美しい世界の神、すなわち《創造の鳳凰》となった。

世界は彼女であり、彼女もまた世界であった。
しかし、世界と彼女はそれぞれ独立した意識を持っていた。

彼女の嘆きから世界が生まれたことを、《始まり》という。



《始まり》から数万年後、彼女の巨大な力から創られた4つの卵から鳥が生まれた。
のちに言う《鳥の創造》である。

鳥たちは瞬く間に繁殖を繰り返し、世界中で暮らすようになった。

この頃の鳥たちは、一族という集団単位で生活していた。
殻を破った時から決まっている種族には関係なく、
思想の一致や主従関係によって築かれた構成である。



時代は少し遡って、《始まり》の次の瞬間。

世界とほぼ同時に現れた4つの大きな卵から、7頭のドラゴンが生まれた。

最初のドラゴンと呼ばれる彼らから、竜族は数を増やしていった。

けれど、ドラゴンたちは必ずしも仲がいいわけではなかった。

7頭はそれぞれ強い力を持ち、さらには独自の能力を持つ神のような存在だったが、
その中で2番目に大きかった卵から産まれたセルフォースという
黄金の雄ドラゴンは気性が荒く、誕生から1万年ほど経ったある時、
最年少かつレルファナと仲のよかった雄のエレインを殺してしまった。

セルフォースはさらに、最年長で最も力の強かったフュルークを殺し、
彼の双子の妹であるヴァネアラも殺してあっという間にドラゴン界の頂点に上り詰めた。

このことに危惧を抱いて逃げ出したレヴァラとネグィラフィア、
つまり3番目の卵から生まれた双子は、いつかセルフォースを倒すために仲間を増やそうと、
暴君の目の届かない辺境の地に隠れて暮らし始めた。

一方、レルファナはエレインが殺された時から暴走を始め、
年長の双子、フュルークとヴァネアラが殺されたのちに
セルフォースを封印することしかできなかった。

この時セルフォースが封印されたことで、拘束されていた双子の妹、アルファリラは逃げ出して、
先に逃亡していたレヴァラたちの元で共に暮らし始めた。



《始まり》から10万年ほど経った頃、
地上では増えすぎた鳥たちが食料と土地を求めて一族同士で凄惨な争いを繰り広げる時代――
通称ネオザンテ戦国時代だった。

セルフォースの子孫である肉食性の強いドラゴンたちが鳥を襲い始めていた頃でもあり、
全ての鳥の母であるレルファナは彼らを守るために力を与えた子、ティサの卵を創造した。

ティサは闇の守護神となり、クジャクのエデュリスと共に
世界に変化をもたらすべく特別な細胞を作り出した。

彼女がPTO細胞と名付けられたそれを空に放つと、それは上空で成長を遂げ、
《空樹》(スカイオーク)と呼ばれる、宙に浮く巨大樹となった。



そしてこの樹こそが、その後十数万年に渡って世界の中心となった、ホーキネス帝国である。



PTO細胞に選ばれた正規の鳥が帝王となって采配を振るっていた時代は、世界は安定し、平和だった。

しかしある時、レルファナの封印の力が切れ、セルフォースが復活すると、
帝国の絶対的な力を狙うセルフォースたち邪悪な竜族と、
レヴァラ率いる善なる竜族と帝国の鳥たちの激しい玉座争いが勃発した。

何年も続いた戦いののち、セルフォースの凶牙によってネグィラフィアが命を落とし、
セルフォースの双子の妹アルファリラが再びセルフォースの手に落ちて戦いは終結した。

こうして、長きに渡るホーキネス帝国の暗黒時代、
セルフォースによる支配の時代が幕を開ける。

レヴァラは生き残った数少ないドラゴンと鳥の仲間を連れて逃げ延び、
態勢を立て直すべくかつて隠れ住んでいた地に戻っていった。



《始まり》から22万年。帝国の創造からも十数万年が経っていた。

帝国創造時に世界と同化してしまっていたレルファナの意識がはっきりとしだし、
ついに彼女は実体を取り戻した。

彼女を目覚めさせたとある鳥によって、世界に衝撃を与えることが2度行われ、
ホーキネスの力の流れが揺らいだ。

一時的ではあるが力を失ったホーキネスの樹は、
その時もっとも近くにあった力、つまりセルフォースの力を吸収し始めた。

弱体化したセルフォースとその仲間たちの隙に乗じて、
レヴァラたちは攻撃を仕掛けた。

今度は死をも辞さない、どちらかが滅びるまで終わらせない、という決意の元、
帝国の創造者ティサとレルファナ、さらに鳥でもドラゴンでもない種族まで参戦した
この戦いは、史上最大規模となった。


ホーキネス滅亡ノ戦いとのちに呼ばれるようになるこの戦いで、セルフォースは《無》に追放され、
彼の娘でありもっとも残虐だったシオルファーテは世界の端の湖に封印された。

そして、元々は世界を安定させるために創造したのだとはいえ、
あまりに強大すぎて危険すぎる存在である帝国は、
創造者ティサとその母レルファナによって心臓部を破壊され、滅んだ。



ホーキネスが滅びて7千年。

これまでの時間の縮尺から見ると一瞬にも満たないような時間だが、
帝国の滅亡によってもたらされた変化は大きく、鳥たちは自由に、平和に暮らしていた。

何より変わったのはその生活で、これまで大きな集団で暮らしてきていたのが、
ほぼ完全に個体単位で暮らすようになっていた。

一部には集団で暮らす鳥たちもいたが、その束縛も限定的で、
多くの鳥は成鳥時の式典、《飛翔の儀》を迎えた後は
好きなところに居を構えて好きなように生きていた。



この時代、竜族はほとんど地上にいなかった。

戦いで疲れ果てた彼らは、傷を癒して力を取り戻すために、世界の各地で眠っていた。

レルファナも、再び体を世界に還元して眠りについていた。
しかし、その意識は常に世界を見守っている。

そして、ティサは、世界から与えられた卵から孵った雛に力を受け継ぎ、姿を消した。



帝国滅亡以来、500年ごとに《舞鷹祭》というものが行われている。

限られた者しか知らないことだが、この舞鷹祭を通して、
世界は鳥たちに何らかの贈り物をする。

7千年という節目の年、16回目の祭りは、結論から言うと、行われなかった。

けれど世界が贈った存在、

それこそが、この物語の主人公。



 *   *   *





〜用語解説〜



《鳳凰》

神もしくは准神を指す言葉。

《無》に最初からいて、たいてい世界に一羽ずつ誕生するものを《創造の鳳凰》といい、
自らの力から様々なものを創れる。

《無》にいたわけではないが世界から生まれたものは《第一世代》と呼ばれ、いわゆる世界の子供。

いずれかの《鳳凰》と何らかの生物の間に生まれた子は《第二世代》と呼ばれる。

あらゆる世界に1羽もしくは数えるほどしかいない特別なものを《滅びの鳳凰》といい、
それはあらゆる《鳳凰》の力を奪い、世界を滅ぼせる力を持つ。

《第二世代》を除く《鳳凰》は、生まれた時から必要な記憶を持っている。

どんな《鳳凰》も、死ぬとその体は消滅して世界に返される。

また、どんな《鳳凰》も《永遠》の力を持っていて通常は不老不死である。
《創造の鳳凰》の場合、その死は世界の死を意味する。



《舞鷹祭》

ホーキネス帝国滅亡後から、500年おきに行われている祭り。

地上にただ1本残った亜空樹の前の空き地で行われるもので、
全世界から集うタカ族やワシ族を始めとする大型の鳥たちが舞を披露する。

この時最後に舞うのがその時代の《ティサ》で、
その舞を見た者は幸せになれるという言い伝えがある。



《飛翔の儀》

帝国滅亡後に新しく作られた文化で、年に4回、各地に計10ヵ所ある舞台で行われる。

自力で生きていけるまで成長した若鳥たちがいくつかのテストに見事合格すると参加できる。

そこで若鳥たちは祝福を受け、その後一斉に飛び立って上空を一周するという
デモンストレーションを経て、正式に成鳥したと認められる。



王族

帝国時代前期の役職名。
竜族に支配された後期にも存在はしていたが、機能はしていなかった。

帝王と同じくPTO細胞に選ばれた、または前任者に指名された鳥。

羽、牙、爪の第1王族、葉、火、氷の第2王族、月、陽、星の第3王族がいる。

第1、2王族は各2羽ずつ、第3王族は1羽ずつ計15羽いる。

PTO細胞を体内に含む影響で寿命がとても長くなるが、
《永遠》ではないのでゆっくりと年老いてしまう。



《十三月の一族》

かつて滅ぼされかけたため王族に敵意を抱く一族。

《創造の鳳凰》を除く《鳳凰》と、鳳凰族の生き残りで構成されている。

王族に決して見つからない地、《夢雲の島》に暮らしている。

戦闘能力がかなり高い。



《夢雲の島》

帝国時代のごく初期にとある帝王が創造した巨大な島。

王族の目から隠すように創られたため、王族とその関係者には決して見つからない。

豊かな森林と荒地があるが、崖が多く高低差が激しい。



大天空帝国ホーキネス

世界を支配する帝王と王族が住まう帝国で、
ホーキネス大陸の上空1万mに浮かぶ巨大な樹。

全身が金など宝石で出来ているが、それを構成するのはPTO細胞と呼ばれる特殊な細胞。

下部には貯蔵庫などの建築物があり、その中心には帝国の生命の源、《磁界石》がある。

別名《空樹》(スカイオーク)



《亜空樹》(ファクージュ)

世界の力が多く集まる存在で、生命力にあふれた聖なる樹。

かつては各地にあったが、多くがセルフォースによって滅ぼされた。



《跳躍》

《無》を経由して世界の別地点に瞬間移動する方法のこと。

ただし、普通の鳥なら8秒、《鳳凰》でも5秒ほどかかる。

目的地をしっかりと思い浮かべ、それなりの速度で身をひねる必要があり、
思念が弱いと《無》に捕らわれて死ぬ。

あまりに危険なため、鳥の中にこれを使うもの、あるいは知る者はほとんどいない。



鳳凰族

帝国創造時、《感じ》の力とホーキネス帝王の座をめぐる争いに敗れ、
住処であったホーキネス大陸を追われた鳥の一族。

さまざまな色形があるが、特別な力はほとんどない。

のちに現れた《十三月の一族》に使役されるようになる。



シーツリーアイス(海樹氷)

南極の海辺にのみ生息するシーツリーの実。

直径8cmほどで、にごった水色をしている。

枝の間から染み出てきた甘い樹液が外気で凍って実のようになる。

たまに中に金色の本物の実が入っている。

根から塩水を吸収しているため微かにしょっぱい。

ちなみにシーツリーの形状は帝国の樹そっくりである。



武器

《鳳凰》たちが1羽ずつ持つ固有の武器。

《無》から呼び出すため破壊されない。

帝国時代には、これらを基にした金属の武器鋳造技術が発達した。



レイレラ

帝国時代の言語で虹の爪を意味する武器。

翼装着型で、普段は銀色だが力を使う時だけ虹色になる。

《武器》を破壊し、その力を世界に返せる唯一の存在とされるが、
その力の強大さと貴重さゆえに世界に好まれていない。



《武器》

力の使い方を知る強い者がその力から創り出した戦う道具。

基本的に創り主に従い、はっきりとした意思は無い。

創り主によってさまざまな特性がある。

帝国時代前期に帝王たちがこの技術を発達させたが、後期に入ると廃れてしまった。



守護者

何かを護る、あるいは司ると表現される状態。

守護者はその対象に責任を持つ代わりに、誰よりも深く対象に影響できる。

守護者が命を落とし、その魂が消えてしまった場合、同時に守護の対象は消滅する。



《世界》

いわゆる意識世界。

創造された者を除くあらゆる生き物が有している。

本体とは独立して存在し、魂が暮らす小さな世界のようなもの。

能力があれば自分以外の《世界》をたずねることもできる。

個体の《世界》はあまり広くなく、外周が白い靄になってぼんやりしている。

ただし、世界の《世界》は別名サン・ドゥ・リャーダとも呼ばれ、世界で命を落としたすべての魂が暮らしている。



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ここまで読んで下さった方、お疲れ様でした。


ホーキネスの世界をより一層楽しんでいただけると幸いです。





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