NotteU

□恍夜の契り
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逃げるように建物の上を走る。
逃げているのは何からか、

ボンゴレかもしれないし、
この闇からかもしれない、

それとも…、

私の過去からだろうか?








(しっかりしろ、お前は誰だ?)








走る速度は落とさずに、目を瞑り自分自身に問かける。

偏に、私といっても幾らでもある。
“過去”を含めた呼び名だけでも多いものだ。








かつては
“白猫”、ペルソナ、497、後継者、義妹、そして…“No.]V”。

今では
鬼姫、奏者、9代目、…神城蓮だってそうだ。








“私”を呼称するものなど多くある。
その中で、“どれ”を“私”と定義すべきか…。






「馬鹿みたい…」


「ホントにな」


「!?」






驚いた。
声の方向を見ればトレインが闇夜に紛れてかなり近くに居たらしい。
気付けない程 私は思考に耽っていたのか…―――。






「抹殺人<イレイサー>としては失格だな」


「っ、!
…………はい、申し訳ありません…トレイン様…」


「………」






トレイン様の言葉に反射的に頭を下げて許しを斯う。
すると直ぐ近くの頭上から、呆れたような溜め息が聞こえてきたかと思うと、頭を撫でられる感覚に思わず顔を上げてしまった。






「たくっ、
何でスイスがそんな畏まってんだよ?
“今”の“主”はスイスだろ?」


「そんな事っ!!」


「それに兄貴に対して、敬語と様付けはどーかと思うぜ?」






「お前だって俺の性格知ってんだろ?」 と苦笑するトレイン様…否、トレインに 「うん」 と、力無く返事を返せば 再び溜め息が聞こえてきてびくりと身体を震わせた。
そんな私に 「お前なぁ〜」 と青筋を立ててにこりと笑うトレインの姿に嫌な予感。
慌て逃げようとするも一歩遅く、呆気なくトレインに羽交い締めにされた私は、強まる腕の力に 「痛い痛い!」 と叫びを上げた。






「ちょ、トレイン!
痛い痛い痛ぃ〜〜〜っ!!!」


「報いだこのヤロ!」


「私は女だから野郎じゃな…―――痛い痛いってばっ!
ごめん!ごめんなさい!!」


「たく」






「初めからそうやって素直に謝ってればいいんだよ」 と満足そうに笑って力を緩めたトレインを屈辱ながら、涙の浮かぶ目で力の限り睨んでやった。
そうしたらまた僅かに力が強まって、「お、抵抗するかぁ〜?」 と楽しそうな…否、意地悪な笑みをトレインが浮かべたものだから、慌て首を左右に振った。
長いものには巻かれろ。
上の者の逆らったら大変なのはこっちだ。












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