サクライロの時間飛躍

□第三幕 「振り分け試験当日」
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その日は朝から憂鬱だった。

ルンルン気分なんかになれるわけがない。

確かに春休み中会ってなかった奴らに会って、

なんとなくテンションが上がるかもしれないが。

それはただの虚像だ。

嘘っぱちの姿。

皆、心にあるものはひとつ。




「振り分け試験ってなんじゃぁああああああああああああああああっ!!」







かくゆう俺もその一人。

去年Fクラスだったため、必死に俺を予備校に連れて行こうとした母を必死になだめた俺。

あんな苦労はもうしたくないし、次は通らないだろう。

もし、今回もFクラスになってしまったら、予備校強制連行となってしまう。

・・・・それだけは絶対に避けたい。

予備校なんぞに行く時間があるのなら家で精神統一修行の一つでもやっているほうがまだマシだ。


と、俺は思っている。

だが、振り分け試験なぞいざ知らず、朝からルンルンと冷蔵庫の中のプリンを頬張っている奴がいる。

もちろん、さくらである。

伊藤さくら。

結局昨日は「私今日は屋根の上で寝たいなー。」とかいって屋根の上に一人の残ったのである。

無論、俺は降り、自分のベッドの上で寝たさ。

そこまで俺もバカじゃない。

で、朝起きてみればこの様子だ。

あの後何を考えたのかは知らんが、今日は朝から機嫌がいい。

というかテンションが高い。

さくらは寝起きの俺を見つけると。

「おはよー。てかおそよーさん。」

と満面の笑みで言ってチュルリッとプリンを口へ流し込む。

寝不足でぼーっとする脳内を整理しつつ、俺は時計を見る。

この間買い換えたばかりの新品の時計は午前8時をまわっている。

あー腹減った。

飯食おう・・・・。










午前8時?









その数字が急に脳の中で回りだす。

そしてまだ目覚めてなかった脳内が覚醒し始める。

ん?午前8時?

Q:今日は何の日だっけ。

A:始業式のある高校2年最初の日。

Q:始業式って何時に始まるんだっけ。

A:8時・・・・・20分?

・・・・Q:高校から片道何分だっけ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A:自転車で30分。または35分。






あり?

計算が合わないじゃないか。

20分しかないのに30分かかるって?

あれぇ?計算が合わないなぁー・・・・。











とか悠長に構えてる暇はなさそうだ。

俺は自室で藍色のブレザーを引っ張り出し、薄い青色をした男子用のネクタイを締め上げる。

そして教材に埋もれた学生バックを拾い上げ、さくらの首根っこを掴んで自転車の荷台に乗せる。

やばい・・・・。

始業式の日はやばい。

教師どもがうろついてやがるからな。

校外周辺を。

どうやって切り抜けるか・・・・。

まぁ、こんなギリギリの時刻だから他の生徒はいないだろう。

俺とさくらがつるんでいる所を見られないのが不幸中の幸いというものだ。

「ねぇねぇ、隼人。急いでんの?」

「そうだっ!!」

それを区切りに俺はペダルに体重を掛ける。

青い自転車はゆっくりと桜並木を進みだした。
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