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□酔った勢い
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酒の力、というものは恐ろしい。
「だから、言ったんですよ。あれほど大丈夫ですかと聞いたのに、あなたときたら…」
「わ、悪かったっ。だから退け!重てぇよ…」
おそらく高級品であろうシャンパンを、少しずつ味わいながらバニーの過去について俺は聞いていた。
大変だったろうに…
あれだけの資料を集めるなど、骨が折れる地道な行動力故だ。
とまぁ、そこまでは良かったのだが。
「まぁ何だ、しみったれた雰囲気は止めようぜ。苦手なんだよ俺。」
そう言って、俺は酒瓶ごとバニーに投げて寄越した。
「付き合えよ、バニーちゃん。」
「しみったれたって…僕の重大な過去なんです。不愉快だ。」
「わ、悪かった悪かった。まま、飲めよ。」
焦って謝罪するもバニーの顔は晴れない。
しかし、眉間に皺を寄せながらも口に酒を運ぶ。
数分後、俺も酔いが回って頭がふわふわし始めた頃…
「…おじさん…」
冒頭に戻る訳である。
ギシッ、とバニーがいつも座っているであろう黒い椅子から、軋む音。
俺に正面から向かい合ったバニーは両膝を俺の腰の両側に挟むように立てる。
両手は俺の肩に置いて。
少々紅くなった顔に、熱っぽい瞳が俺の瞳と絡んだ。
「ねぇ、先輩。傷口、見せて下さい…」
ああ、こいつ…
酔ってんな。やっぱり。