Monsterシリーズ
□明日の記憶
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あとがき
読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
結城さんの気絶の理由を書きたかった、
あと、ベタ甘なだけのマキを、書きたかっただけ。的な話でした。
受け溺愛大好きなので。。
”祝われるより、祝う方が幸せ”なマキでした。
オマケですが
書き終わってプレゼントを渡して無いことに気付いた管理人( ̄▽ ̄;)
今からプレゼントをちゃんと渡したいと思います♪
次はオマケです。
(ちょっと長いです(;´Д`))
−−−−−−−
魅惑の甘い味
☆☆☆☆☆
−カチャカチャ…ザァァァ……
水が冷たいな…
水道水からも季節の変化を感じる程に冬は近付いている。遅い夕食がおわり、俺は汚れた食器達を綺麗にしている最中だ。
結城さんはお風呂に入っている。
そのとき、俺は思いだした。
「あ、忘れてた…」
彼に誕生日プレゼントを渡していない事に。
食器を洗い、片付けを終わらせた後、綺麗になったテーブルに鞄からプレゼントのネックレスを取り出して置く。
小さな可愛い箱に入ったネックレス。
あなたが気に入ってくれたらいいけど……
なんて思いながら、俺は椅子に座って彼を待つ。
目を閉じると、先ほど見た結城さんの夢が思い出された。
可愛い小さな結城さん…
無邪気な笑顔の結城さん…
そして、おいしそうに血を飲む結城さん………
あの感覚、血を飲んだときの感覚…
甘くて、香しくて目眩がした。
結城さんは、俺の血を飲むとき、あんな風に美味しく感じているのだろうか。
もう一度あの味を確かめてみたい。
俺は椅子から立ち上がり、キッチンの引き出しからペティナイフを取り出した。
そっと右手首をそれでなぞると、痛みとともにスッと入ったラインから赤い液がゆっくりと溢れていく。
浅い傷でも、血は出るんだな…と当たり前の事を感じつつ、俺はその傷を舌でなめとった。
……………まずい
鉄の味がするだけの、美味しいとは言い難い液体。こんなものの何が美味しいのか。
俺はもう一度なめてみた。
「マキ……何してんの?」
「あ、あがりましたか?」
見られて少し恥ずかしいと感じたが素知らぬ振りして俺は返事をする。
「怪我、したの?」
「ええ、ちょっと」
まさかわざと自分で切ったとは言えない。
「気をつけてね」
そう言った結城さん、だが視線は赤色にくぎづけで、濡れた唇が少し開いている。
「結城さん、舐めます?」
彼に腕を差し出すと、ふわっと笑った彼。だがそれはいつもと違う妖艶な笑みだった。そして彼の唇が俺の腕に吸い付いた。
ピチャ、チュ………
風呂上がりで湯気をまとい、薄く朱に染まった柔らかな肌の結城さんは、そのままでも色気があるのに美味しそうに血をなめとる今の彼は、いつもの何倍も色っぽく見える。
「美味しいですか?」
「ん………」
小さく頷くだけで血を吸い取り続ける結城さん。
うっすらとにじむだけの血液にこんなに夢中になるなんて・・・
もう
だれの血も、ほしがらないで
俺の血だけで、生きていて
俺だけで、満たされてください
瞳を潤ませ恍惚とした笑みで俺以外の首筋に吸い付く姿なんて、考えたくない・・・・
「結城さん、俺にもその甘い血の美味しさ、わけてくれませんか?」
そう呟いて俺は彼の唇に自分のそれを寄せる。
俺の血は美味しくないけれど、あなたの甘すぎる唇なら、何度でも味わいたい。
俺に、ください
あなたの身体……
しかし、触れる前に結城さんはその場に崩れ落ちた。
キスしそこねて残念な気分になったが意識の無い彼をこのままにしておくわけにはいかない。そっと結城さんを抱き抱え、ベッドへと運ぶ。
こんな簡単に気を失って………
今まで誰にも吸血鬼だとばれなかったことが奇跡じゃないかと思ってしまう。
綺麗な顔をそっとなでて、俺はダイニングへ戻った。
ネックレスを持ってくるために。寝ている間に彼の首にかけてしまおうと思ったから。
だけど再び寝室のドアを開けたら結城さんはベッドから上半身を起こしていた。
「マキごめん。また俺倒れてた」
「いいえ。俺が血を舐めるように誘ったせいですから、気にしないで」
彼の傍まで歩み寄った俺は、小さな箱を差し出す。
「これ…俺に?」
「食事の時に渡せば良かったのですが…」
忘れてたと言う言葉をあえて言わずごまかした。
「ありがと。開けていい?」
にこりと笑った彼の笑顔。そこには先程の妖艶さなど微塵も感じさせない爽やかな笑み。
「ええ」
そして嬉しそうに箱を開けてネックレスを取り出した。
「二つ…ペアなんだ…。じゃあ、こっちはマキのだね」
と俺にKのイニシャルの片割れを渡してくれる。
俺も彼も、それを首に付けた。
「ありがとう。嬉しい」
そう言うとぎゅっと俺に抱き着いてくる結城さん。
喜びを全身で俺に伝えてくる結城さんが愛しくて、俺も彼を抱きしめてその唇にキスをした。
「……んっ……っ」
絡めあう舌と、こぼれてくる甘い吐息が俺を狂わせていく。
気付けば彼の身体を押し倒していた。
「はっん……マキ……しよ?」
離れた唇から、さらに甘い誘いの言葉。
「もちろん……ん?」
誘われるまま彼の服を脱がそうとしたら、何かが俺の動きを妨げた。
「あははっ、絡まってるよ〜」
ペアで付けたネックレスがキスの間に絡まって外れなくなっていたのだ。
「離れたくないって事でしょうか?」
俺の気持ちを代弁するかのようなネックレス、その留め具を外して二つが絡まったままサイドテーブルにそっと置いた。
「俺も、離れたくないよ」
身体の芯を熱くする言葉をこぼす彼の、湯上がりで甘い匂いを放つ首筋に俺は顔をうずめた。
そんな俺は、恍惚の笑みを浮かべているにちがいない。
まるで吸血鬼のように
あなたを
俺の血で
俺の体液で
俺の吐息で
俺と言うほどけない鎖で埋め尽くしたい
絡まったネックレスよりも
あなたをその奥まで
絡めとって離さないから
だから、俺だけに下さい
あなたの紡ぐ甘い愉悦を
☆☆☆☆☆
ここまで読んでくださったみなさま。本当にありがとうございました。