寄り添い花シリーズ

□寄り添い花
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桐島『霞の向こう』


☆☆☆☆☆


 初体験は12の時だった。相手はクラス担任。

 28歳の教師は誰が見ても美人と言わざるを得ないほどの女だった。

 柔らかなウェーブのかかった長い金髪にはちきれそうなほどの大きな胸。教師としての自信も溢れる女は、その己を見せつけるように、体をくねらせ快楽に更けっていた。

 豊満な体を持った自分より背の高い女と、誰もいない教室でその行為は毎日のように繰り返された。

『あなた、上手ね…っぁ、やっぱり、飛び級するくらいの秀才は、…どんなこともっ上手いのね』

 まだ少年だった桐島の動きに合わせてタプタプと女の胸が揺れる。

 桐島にとってセックスはただの興味だった。誘われて断る選択肢は彼に無かった。

 そして一月ほどたったある日、教師はいなくなった。後で聞いた噂では妊娠したらしい。誰の子供かは知らない。

 自分以外の誰かと性行為をしていたかもしれないし、さして興味はなかった。

 あの女は言った。中で出せと。12の自分でもそれは危険だとわかっていたのに、女はそう言ったのだ。

『あなたみたいな優秀な子、大好きよ』

 頭のいい我が子が欲しいからセックスに誘ったのだろう。女教師にとって、己はただの種馬だったのだ。


 なんの想いも交わすことのない淡泊なセックスはその後も続いた。

 来るもの拒まずな桐島にとって、女とは性欲を処理するだけの存在となっていた。

 学生時代は女に迫られることなど、数え切れないほどあった。

 だが彼はセックスは気持ちがいいと思えたものの、相手の女性をどうしても好きになれなかった。

 舐めるようにからみつく濡れた視線。胸や尻を揺らして迫る仕草。何度見ても不快感しか出てこない。

 それは思えば母親のせいだったかもしれない。

 桐島の母は何度も結婚離婚を繰り返し、いつも男にすがっていた。彼女にとって自分は足かせでしかなかった。

 それを証明するかのように、15になり大学に入学した桐島をおいて、彼女は男と共にどこかに消えた。


 女とはそういうものだ。

 きっと己は、一生誰かを好きなることなんて出来そうにない、そう思っていた。


*****

 
 夢精を初めて体験した日、桐島は奏太に人体のこと、男女による生殖行為、そして妊娠出産という人類の繁栄について丁寧に説明した。
 
 そして、性行為という言葉を知った奏太は言った。

『桐島、教えてよ。お前、いっぱい経験してるんでしょ?ボクに教えてよ。ボクだっていつか結婚するんだし、ちゃんと勉強しとかなきゃ』

『では、女性をご紹介しましょう』

『いやだ、ボクはお前がいいんだ。女性とするのは、好きになった人だけがいいから』

『しかし.....』

『お前、嫌なのか?』

『嫌では、ございません。ですがわたくしは男ですから、教えるにも限度があるのです』

『じゃあ、教えてくれるんだね』

『奏太さま.....』

『キスしてよ、桐島』

 すっと、奏太が桐島に近づいた。腕を執事の首へと回し、触れ合うぎりぎりの所まで唇を持ってきて、

『キスしてよ、桐島。キスくらい、ちゃんと、教えて?』

 好奇心で目をきらきらさせる奏太。


 早朝、ベッドで無理矢理に奪ってしまった唇。あんなことはもう二度としたくはない。

 いや、してはならない。

 奏太に執事の自分が恋慕心を抱いているなど気づかれては、傍にいることが出来なくなってしまう。

 
 それよりも、ずっとそばにいて
 この人を、守り育てたい


 沸いてきた執事として主を思う気持ちと裏腹の欲望とがせめぎ合う。

 だが今なら『教育』と言う名の元に奏太に触れられる。

 育てるため、だ。
 この人を、育てるため。


 そのあまりに甘美な誘惑に我慢できなくなった桐島。


『ご無礼を、申し訳ございません』

 眉間にしわを入れたまま、小さな声で謝罪を述べた。

 そしてその言葉通り、無礼きわまりないほどに、桐島は奏太の唇を責め立てた。


『っ.....ぁ.....っふぁ..........ん、、っ、っん.....っ』


 ジュルジュルと音を立てて口腔をなぶりながら、苦しくて逃れようとする奏太の後頭部を回した腕で押さえつけて逃さない。

 そして、その細腰をキツく抱きしめて彼のモノに己のそれを押しつけて揺らした。

 唇だけでなく、全身で、快楽の渦へと引き込んでいく。


『は、、、、ぁ、、、、ぁ、、、っ』


 離れた小さな唇からは、荒い息づかいしか聞こえない。足腰に力の入らない智を両手で抱え込むように抱き留めた桐島は

『大丈夫で、ございますか?』

と、執事らしく声をかけた。

『くらくら、する、、っ』

『少しご休憩なさった方が良いかと思います』


 そして抱きしめた体の両膝裏に片手をまわし、奏太を持ち上げた桐島は、そっとベッドに寝かせた。

 顔を真っ赤にさせて荒い息を吐く主の姿に、腰の奥がジンジンと燃え上がる。

 ああ、このまま、押し倒して快楽におぼれさせたい

 沸いてきたあらぬ思いを押し隠して、

『奏太さま、冷たいお飲みものをお持ちいたします』

と言い、彼はベッドを離れた。


 それから夜になると、奏太は毎日桐島に行為をねだった。

 キスは深くとろけるまでしないと満足しなくなり、熱く硬くなった幼いペニスを桐島が手淫で果てさせると言う行為にまで進むのに3日もかからなかった。


 小さなソコが、己の手の平ではじける瞬間、

『あ、っ、きりしまぁっっ、、、っっ』

と己を呼ぶその声に、理性が吹き飛びそうになる。

 それをこらえて、びくびくと揺れる小さなそれを絹のハンカチで包み込み、吐き出された液を丁寧にぬぐい取った。



『このあとはどうやるの?』と小さな声が聞こえたのは、主を慰めるようになってから5日後。


 この後の行為に及ぶなど、とうてい無理なことだ。彼を果てさせることすら、本当ならばしてはならないことなのに......

『いえ、体をつなげるのは男女で行うのが通例です』

 桐島の冷静な一言に押し黙ってしまった奏太の服を整えて、執事は笑顔を見せる。


『奏太さまに、大切な女性が出来ましたらすぐそれも出来ます。大丈夫です』

 その言葉に、眉間をしかめた奏太は『じゃあ……』と何かを言い掛けて止まった。


『もういい、ボク寝るから、おやすみ』


 そして、ふてくされたように奏太は羽毛布団の波に消えた。
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