Monsterシリーズ

□Monster
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ふりだったのに

☆☆☆☆☆

 医務室まで一緒に来たんだけど、俺は部屋に入らず外で待ってた。
 傷口を見たくなかったんだ。
 舐めたくなるから。
 今朝、マキの指から溢れる血を見て、思わず舐めてしまった。
 おいしいなんて言ってしまったし・・・・・・
 ほんとにおいしかったんだけど。
 あんなに、甘くておいしいの初めてだったけど。
 だけどマキ、俺の事、なんか変に思ってるんじゃないかなあ。
 俺が人間じゃないってばれたら、きっとマキのとなりにいれなくなっちゃう。
 せっかく、一緒にいるのに、一緒にいたらすごい楽しいのに。。。

 俺、なんか、最近おかしんだ。
 2ヶ月ちかくマキと一緒にいて、いつのまにかマキのとなりにいる事が当たり前みたいになってた。

 マキと、甘いキスをするのも。
 マキと、熱いセックスをするのも。

 さっき男にキスされて触られた時、あまりにも気持ち悪かった。
 今まであんな事無かったのに
 誰とでも俺はキスもセックスもしてきたのに
 だけど、気持ち悪すぎてマキしか頭に浮かばなかった。

 マキに触れたくて仕方なかった。
 気持ちよくなりたかった。

 だから、カメラあったけどキスしちゃったんだ。
 前みたいに払いのけられると思ったんだけど、マキは俺をぎゅって抱きしめてくれたんだ。


 マキ、まだかな? と思ったとき、キイっとドアが開いた。

「おまたせしました」
「大丈夫だった?」
「ええ、傷口はそんなに深くないです。だからすぐ治るって言われました」
「よかった〜。もう、あんな事無いといいね」
「ほんとに。俺の傷なんかよりあなたが一番イヤな思いしましたよね。辛くないですか?」
「俺? 大丈夫だよ。マキがいるもん」

 そう言ったら、マキの顔が真っ赤になった。

 え?
 なんで?

「あれ?おかしい事言った?」
「いえ・・・・・・うれしくて・・・・・・」

 うれしい?
 マキ、うれしいの?

 よく分かんなくて、マキをじっと見てたら、「結城さん、あなたが、好きです」とマキが言ってくれた。

 マキは、よくこの言葉を言ってくる。
 俺は言われるとうれしくなるんだ。
 血を飲みたくて、苦しい感じがするけど、なんかうれしい。
 マキもね、いつもちょっと苦しそうな顔して言ってくるんだ。
 俺みたいに血が飲みたい訳じゃないだろうけど、苦しそう。

 そんでね、俺も好きだよって言うと、苦しそうな顔がふわって笑顔になるの。
 その顔が好き。
 なんかね、幸せな顔してるんだよね。
 俺もそれ見て幸せな気持ちになるの。
 マキといるとね、いっぱい幸せな気持ちになるって、最近気付いたんだ。

 今日はちょっと遅刻もしたし、嫌な事もあったけど、でもマキが、来てくれて、カメラも気にせず俺にいっぱいキスしてくれて、すごい胸があったかくなった。
 なんかさ、今も幸せだから、好きも言わずにマキに抱きついちゃった。

「結城さん、痛いです」
「あ、ごめんっ」

 俺はあわててマキから離れた。怪我してんのに、抱きついたらダメだよね。

「俺、仕事に戻るよ。あ、今日お家行ってもいい?」
「俺、腕があまり使えませんから何も出来ませんよ」
「いいよ。俺がご飯作るし」
「じゃあ、お待ちしてます」

 俺たちは手を軽く振って仕事に戻った。

 いつもどおり廊下を掃除してたら、宅配物を届けにバイオロエナジー社にきた駿に出会った。

「絵都、今日もけっこう元気だね〜」
「うん、元気だよー。駿もだね」

 そう言ったら駿が俺の顔をしげしげとのぞきにきた。

「な、何?なにかついてる?」

 駿が言う。

「ほんと、肌もツヤツヤしてるし、めっちゃ美味しそうだよ絵都。俺が食べたいくらいに。でもちょっと色白いな」
「何言ってんの、俺駿に食べられたくないよ〜。それに俺らの血にがいだけじゃん」
「あはは、そうだよね。つまり、俺の食べるはHするだけだよ?」

 ・・・・・・っえぇ?
 思わぬ一言にびっくりして顔が真っ赤になっちゃった。

「あ、絵都顔赤いよ。さては、Hしまくってんの?」

 駿に言われて俺は返事も出来ずうつむいた。
 確かに、週に2、3回はしてる気がする。

「なるほど。だからか、お肌つやつやなの」
「何が、だからなの?」
「んー。絵都さ、相手の人。男でしょ?」
「なんでわかんの? っあっ」

 つい事実をばらしてしまった事に俺はまた赤くなってしまう。

「で、絵都が抱かれてんでしょ? だから、お肌つやつや」

 確かに、そうだけど・・・・・・なんでつやつやなの??
 意味が分からない顔で駿を見てたら、にこっと笑って話し始めた。

「そっか。絵都は早くにパパ亡くしてるから、俺らの体質とかあんまり詳しく知らないままなんだよね。もっと早くに教えてあげたら良かったかな」
「ねえ、駿、俺たちが血を飲む理由はわかる?」
「遺伝子補給ってパパが言ってたよ」
「そのとおり。それが何よりも一番重要なの。もちろん他にも色々と血液から補給してんだけどさ。遺伝子っていうよりDNA(デオキシリボ核酸)だね。なぜか俺たちの体は人間のDNAしか吸収できないんだ」
「だからって、それでどうしてお肌つやつやになるの?」
「実はね、血液って言っても、血液の中の赤血球はDNAないの。血液細胞中のたった3%しかない白血球から俺たちDNA補給してんだよ」
「3%?」
「そ、効率悪いでしょ?でもね、精液のなかにはDNAがいっぱいなんだ。一回のHで出る精液中には多くて4億。それに比べて人間の体内にある白血球は全部で300億くらいしかない。わかる?」
「わかんないよ、難しい・・・・・・」
「はあ、しかたないな。要するに、毎日1回エッチしてたらそれだけで年に1回人間をまるまる食べるよりもかなり多くDNAを取る事が出来んの」
「そうなの!?」
「絵都、ほんと、おバカだね。計算するだけでしょ」
「ん?でもさ、おれ食べてないよ。だって口にいれた事無いもん」
「シタからいれてんじゃん」
「下って・・・・・・そんなんでいいの?」

 駿の言葉に、また顔が赤くなる。

「俺たちはほぼ液体しか消化できないから、栄養の吸収量が凄く少ないでしょ。だから、全身の粘膜から栄養を吸収してんだよ。できるだけ沢山取れるようにね。絵都がキスしてすぐ意識失うのも、栄養を吸収してる証拠だよ」
「駿、説明ながい。てか、何言ってんのか、俺ほとんど分かんない」
「こりゃダメだな・・・・・・話しても意味ないや」

 あきれて駿は、壁に寄りかかった。

「ごめんね。俺バカでさ・・・でもつまり、俺セックスで栄養取ってたってこと?」
「そういうこと。でも、栄養偏るよ。ちゃんと血も飲んでね」
「うん」
「だけどH中に首に吸い付きたくなるの、よく我慢できるね?」
「やりたいけど、吸い付けるほど俺に余裕がないの」
「感じすぎてってこと?」

 また顔が赤くなってしまった・・・・。

「あー、この話はもうおしまいっ。駿またねっ」

 俺はごまかしてバイバイすることにした。

「もう一回言うけど栄養偏るからちゃんと飲めよ〜」

 駿がなんか言ってたけど、恥ずかしいから掃除道具を押してその場を離れた。
 でも、駿のおかげで最近あんまりお腹すいたって思わない理由がわかった。
 セックスした後に、お腹の中が満たされた感覚になるのも。
 そして、いつも意識を失う事も。
 俺は、栄養を吸収してるときは気絶しちゃうんだ。
 駿は俺は気絶しないぞって前に言ってたから、俺だけっぽいけど。
 なんでか自分でも分かんないけどさ、吸血鬼でもいろんな体がいるだろうから、気にしてないけど。
 マキの血たくさん飲んだらきっと、長い時間気絶してんだろうな。
 でもまったく飲めてないんだけど。

 初めてマキとセックスしてしばらくは、セックス中に何度も吸い付こうとチャレンジしてたんだ。
 そのためにマキの隣にいたから。
 だけどさ、いくらがんばっても、気持ち良くてそれどころじゃないの。
 そのうち、血を吸う事が目的でセックスしてるというより、気持ち良くなりたいからセックスしたくなってきて・・・・・・

 した後の満たされた気分とか
 翌日目が覚めたときのマキの寝顔とか
 ぎゅって抱きしめてくれてる腕とか
 おはようございますって言ってくれるときの笑顔とか

 そんなのもぜんぶ気持ちいいの。
 ドキドキするけど、気持ちいい。

 マキとただご飯食べてるときもね、なんか気持ちいいの。
 だからさ、ずっとマキの隣にいたいって、思うようになってきて・・・・・・

 お預け食らってんのに、俺変だよね。
 でも、マキの血、吸わなくていいなら、
 俺、このままマキのそばにいれるかな?

 吸血鬼だってばれなければ、いれるよね?
 ほかの所で、血を補給したら、いいだけだし。

 なんか嬉しくなってきた。
 仕事が終わったら早く会いに行こう。
 マキのおうち、行こう。
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