Monsterシリーズ

□Monster
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ほしいもの


☆☆☆☆☆


 さっきね。また駿に会ったんだ。いつものように掃除してたら。

「お疲れ駿。朝も会ったのに夕方も配達なんて、今日は忙しいの?」
「絵都、今日眠そうだよね?」

 俺の顔を見て少し眉をひそめた駿はすぐにそう言った。
 ほんと、よくわかるよね。

「うん、、なんかね、眠いの。昨日疲れたからかなあ・・・・・・」
「絵都、血飲んでる?」

 言われて気付いた。そう言えば、、マキに出会ってから一度も飲んでない。
 指からこぼれた血をほんの少しだけ舐めただけ。

「飲んでないなあ、でも、セックスはしてるよ? 駿言ってたじゃん、それで栄養とれるって」

 駿がはあ・・・・・・とため息をついて話す。

「あのね、、確かにDNAは取れるけど、その他の栄養はHじゃ取れないの。ちゃんと飲んでねって言ったよ、俺」

 え? そうなの?

 でも・・
 俺ね、血を飲みたくないんだ。

「ねぇ、駿。俺たちさ、血を飲まずに生きていく事って出来ないの?」

 マキと、一緒にいたいんだ。

 血を飲まなければ、俺の正体がばれないままで、きっとそばにいれるよね。

「それは無理だよ。人間に水を飲まずに生きろって言ってるのと同じだよ」

 駿はまた、はあ、、とため息をついた。

「絵都、どうして飲みたくないの? 彼氏の血もらえばいいじゃん。そのための彼氏でしょ?」
「ちがうよ!!」

 思わず叫んでしまった。
 駿がびっくりしてる。

「ちがうよ・・・・マキと、ずっと、一緒にいたいんだ。・・・・・・俺、血なんて飲まずに、生きたいよ・・・人間に、なりたい・・・」
「絵都・・マキって人の事が、好きなんだね・・・でも、好きでも好きじゃなくても、俺たちは血を飲まずには生きていけないんだよ?」
「だけど・・・ばれたら、マキ、離れていっちゃうよぉ」

 駿が、苦しそうな顔で俺に言った。

「恋が終わるのは辛いと思うけどさ、でも、人と俺たちとは全く違う生き物なんだよ? 好きになっても・・・どうしようもないんだよ・・・」

 ポタって涙が出てきた。
 
 マキ・・・・・・
 俺、飲みたくないよ。
 マキと・・・・・・離れたくない。

 俺・・・
 人間になりたいよ


 駿がぎゅって抱きしめてくれた。

 駿、駿は誰かに恋してるの?
 さっき、凄い切ない顔してたよ?
 俺たちさ、恋、できないの?
 こんなに、マキが好きなのに
 マキ
 マキ・・・

 なんか、
 また眠くなってきた・・・・・・

 もし、俺が死んだら、人間に生まれ変われるかな?

 マキと同じ

 人間に


   *


「ん・・・・・・ぁ、れ、?」

 目が覚めたら、見た事無い白い天井が見えた。
 横を向いたらマキがいた。

 なんで?
 ここ、どこ?

「おはようございます」

 いつも優しいマキの笑顔がなんか少し暗い。

「マキ?どうしたの?」
「あなたが起きるのを待っていたんですよ。もう午後6時です」

 あれ? そう言えば、俺、掃除中だったような・・・・・・

「ここは医務室です。掃除中に倒れたあなたを希山さんがここまで連れてきてくださったんです」

 そうだった。駿と一緒にいたんだ。そんで、俺、寝ちゃったの?

 訳わかんない、と思ったら、マキが俺の手をぎゅっと握ってきた。

「マキ?」
「結城さん、帰りましょ。立てますか?」
「もちろん。何? 俺病気じゃないよ。寝てただけだしさ。ごめんね。待ってくれてたんだよね」
「ええ、起きてくださって嬉しいです」

 相変わらず優しいね、マキ。

 俺もマキみたいに優しくしたいな・・・

 ベッドからよいしょっと降りた俺はマキと手をつないだまま医務室を後にした。
 俺は更衣室に寄って作業着から私服へと着替える。その間マキは廊下で待ってくれてた。

 俺、今日は自分の家に戻ろう、と思ってた。
 なんか眠いし、マキのうちに行ってもきっと何も出来ずに寝てるだけだと思ったから。

 着替えを終えて外に出ると、マキがぎゅって抱きついてきた。

「マキ?どうしたの?」

 人目につくところでこんな事、普段しないのに・・・・・・

「結城さん、今日も俺のうち、来てくれませんか?」
「今日は家に帰るよ。ごめんね。俺眠いしさ。なんもできないもん」
「いいんです。あなたのそばにいたいんです。一緒にいてくれませんか?」

 マキの一言がうれしくて、俺は思わずうなずいてしまった。
 マキが、俺と一緒にいたいって思ってくれてる。
 俺、ほんとに単純だよね。
 さっきの決意もマキの一言でこんなにも崩れていくんだ。
 でも、嬉しいからいいや。
 俺も一緒にいたいんだ。
 だって、マキが好きなんだもん。

 ぎゅってマキに抱きついてから
 俺は彼から体を離した。

「うん。マキん家行くよ」

 そう言うと、マキが笑った。でもそれは目が覚めた時に見た少し暗い笑顔と一緒。

「マキ?なんか悲しい事あったの?」

 俺は訊ねた。でもマキは、「なんでもありませんよ。少し疲れただけです」とにこり笑って俺の背中をそっと撫でた。


  
 そして、マキの家に行った俺はーーー



「んあっ、、やっっ、もう、、やめてっ、ああ!、やっやっ」

 俺は必死に懇願した。

 もうかれこれ1時間ちかくマキに気持ちよくされ続けてて。

「結城さんっ、言ってくださいっ」
「やあっ、、っにっマキがっ好きなのっ、、、あんっ、、っぁあっ、っ好きっ」

 俺はうわ言のようにマキに好きと言い続ける。
 だって、それしか言えないから。
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