短編集(Rあり)
□Endlless Game(6p)
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ショタ受け、無理矢理、わき役死ぬ、
女性とのR描写あり。
Notハピエン、流血、痛々しい。
不幸満載。泥臭さ満載。
欲望と不快感しかないです。
色々と病んでます。
それでも良い方だけどうぞ。
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夢
☆☆☆☆☆
ギシっ、ギシっと軋むのはこの寺の古めかしい床。そこに敷かれた薄っぺらい布団の上で揺れる二つの体が音の原因だ。
「あんっ、・・・・っあっ、っはぁっ」
寺には似つかわしくない甘い声がかすかに聞こえる。それは己の声。外に漏れないように小さな声で喘ぐ事ももう慣れたものだ。背中に当たる布団が薄すぎて揺らされ擦れる背骨が少し痛いがそれを快感に埋めるべく、思い切り開かれた股の奥にある熱い触れ合いに意識を集中する。
己より五寸(十五センチ)近く背の高い男の、その逞しい肉で突かれて快楽に揉まれながら、しかしどこか冷静な脳味噌は、部屋にある行灯の明かりに照らされる目の前の男の顔を見て、「ぜんぜん好みじゃねえな」と心中で呟いた。
小柄な彼のその顔はとても美しい。黒目がちな目の、少し垂れた甘く影を落とす目尻は柔らかくて、綺麗に通った鼻筋としっとりと潤んだ小さな唇の赤さ。そしてそれらを包む輪郭もまた、若いからだろうか、やわらかく丸みがあり、まるで女のようだ。
「く、、ぅっ」
好みでない男の声と己の体の奥で終わりを悟った彼は、果てた固まりのいなくなった体をぐったりと布団に預けた。本人は気付いていないのかもしれないが、彼の既に二十歳を越えているのに幼さの残るその顔と、相反するように引き締まった体の卑猥さは見るもの全ての興奮をかき立てる肉体だ。
男はその妖艶な体に薄い布団を掛け、横ですぐに着替えを始める。あっという間に白い襦袢なって枕のすぐ傍にある床に胡座をかいた。
そこに扉をたたく音と声。
「お屋形さま」
「入れ」
男の口が許可を出せば、鎧姿の男が扉を開け、しずじずと歩み寄ってきた。ちらりとこちらの乱れた布団を一瞥して。
「籐淋(とうりん)様。明後日の喜多田軍との襲撃についてですが」
「それはもう、案がある」
籐淋と呼ばれた男はニヤリ顔をゆがめる。彼が好みでないと思ったその顔は、彫りもそこそこ深く、鼻筋も通りとても精悍だ。年齢は四十を過ぎ、その年相応な皺が刻まれた顔はどう見てもイイ男の中の一人である。
布団の中からちらとその整った横顔を見て、(やっぱ好みじゃねえな)と思った彼は、籐淋が床に紙を広げたのを見て、肌がざわつくのを感じた。それは現在彼と籐淋がいる寺周辺の簡単な見取り図だった。筆を取った籐淋は作戦をそこに書き込みながら部下に説明する。
「敵は奇襲戦が得意だ。この寺の裏に崖がある。こっちからは攻められないから兵を出来るだけ崖以外に集めると我らの行動を読んでいるはず。だが絶対に崖から来る。多分大将がな。この崖も度胸のある者なら降りられるだろう。精鋭を引き連れて降りてくるだろうから崖の前には弓隊を置け。そして降りる敵には弓矢を隙間無く浴びせてやれ。残りの三方はどうせ雑魚ばかりだろうから・・・」
布団を深めにかぶる彼は、気怠そうな色香を振りまいたまま、部下と明後日の襲撃について熱く語り続ける声に耳を傾け一言残らず脳裏に刻んだ。
そして話が尽きた頃、しっとりとした声で呼びかける。
「籐淋さま、戦いが始まるのですね」
「おお、セン、起きたのか」
籐淋の声は先ほど部下と話しているときの荒々しさなど欠片もない柔な音色。見取り図から顔を上げ、『セン』に微笑んだ。
『セン』と呼ばれた彼はユルと体を起こした。そのおかげで籐淋に掛けられた布団が腰あたりまでずり落ち、先ほどまで愛された痕の散る白い肌が行灯の明かりにさらされる。
それに生唾を飲んだのは籐淋ではなく部下。慌てて目をそらせた部下は、
「そ、それでは各隊の隊長に伝達して参ります。失礼しましたっ」
と声を出し、そそくさと出ていった。
「あいつの目にはあまりにも勿体ない物を見せたな。ちゃんと隠しておけ」
出て行った部下にそんな言葉を放った籐淋は、『セン』を抱きしめる。
「明後日で漸く蹴りが付くだろう。絶対に勝って見せる」
「わたくしもお屋形様の盾くらいになら、なれます。戦いの際まで、お側においてください。お屋形様の夢がかなう瞬間を見たいのです」
「本当に可愛い奴だ、お前は。共に見ようぞ、栄華の夢を」
笑った籐淋は、『セン』に口付けをすると、もう一度その体を布団に押し倒し、甘い顔で彼を見下ろす。その微笑みの下にいる『セン』の唇が、男の名を呼ぶ。
「籐淋さま・・・」
それに男はさらに微笑んだ。
(やっぱり、好きじゃねえな、この顔)と呟く心の声を無視して、『セン』は自分を見下ろす男に欲に濡れた瞳を見せた。そして籐淋のたくましい胸板に顔を寄せれば、男の指が先ほどの行為で潤ったままの奥に伸ばされる。彼は布団わきに広げられたままの戦法入り見取り図を横目でみながら、その体を籐淋に再び開いた。
*****
「なぜ・・・なぜ負けたんだっ・・・っこちらの方が兵も多いし立地も戦法も完璧だったはずっ」
林の中、敵に追われながら数少ない部下と逃げまどう籐淋はそんな弱音を吐いた。
「籐淋さま、っ、今は、どうぞお逃げ下さいっ」
『セン』は一緒に駆けながらお屋形様をたしなめる。背後では、部下が敵に斬りつけられた断末魔の叫びが次々にあがっていた。
「最後まで、お供します」
一人、また一人と部下の減る中、走って駆けめぐった林の終わり。ついに籐淋は敵を振り切り、戦場から遠く離れた湖の畔までやってきた。
静かな湖の水面を見つめ、そばにいる『セン』は呟く。
「・・・わたくしと、お屋形様以外、誰も、残ってはおりませんね」
「くそ・・・っ。こんな、こんなことが・・・っ。なんだあの敵将はっ!まるでこっちの戦法を全て知っているかのように、っ、ことごとく裏をかかれたっ!」
「籐淋さま・・・っ。生きていればまた復讐を遂げることも出来ましょう。奪われた領地をあの者から再び奪還する事も、きっとっ!だから今はっ、遠くに逃げましょうっ」
彼は籐淋を励まそうと言葉を掛けた。
だが、
「っ貴様っ、出来ると思うのかっ、あいつは我が領地以外に既に隣国の土地も手に入れているっ。そんな輩相手に、どんな戦法があるというのだっ!」
興奮した籐淋は、腰にあった剣をガシャンっと地面に投げつけてしまう。
「もう・・・おしまいだ・・・」
憔悴しきった男はその高い背丈を負け犬らしく縮めて嘆くだけ。それを見た『セン』は、フハハハっと笑い出した。
「なんだ、っ、あんたもその程度か。体もでかいし態度も横柄だし、もっと肝の据わった男だと思ったのに。つまんねぇな・・・」
これまでの口調と一転した下品な言葉使いに籐淋が驚きの顔を見せた。
「セ、セン?」
女のようにたおやかな筈の『セン』が、不適な笑いとともに、言葉を放った。
「あんた、ただの井の中の蛙だな。おだてられて育った結果の、残念な奴だ。四十にもなってこの様じゃ、ぜってえ領地奪還なんて出来ねぇし。もうあんたにゃ、興味ねぇわ俺」
籐淋の投げ捨てた刀を拾った『セン』は、鞘から刀身を抜き出した。そして
「死にましょう、籐淋さま」
と閨に誘うかように甘く微笑む。
「セン・・・お前、まさか・・・」
驚きと疑惑と混乱で籐淋の顔がゆがんだ。そのとき、シュンッと空気を切り裂く音が耳に届き、そのすぐ後に訪れた鈍い破音とともに、籐淋の顔がさらに苦痛にゆがむ。
「な、・・・ぜ・・」
その背中には弓矢が2本、突き立っていた。
「あーあ、もう追いつかれちゃったね。だから逃げようって言ったのに。じゃ、死ぬしかないでしょ、籐淋さま?その矢、毒塗ってあるし、ほっといても半刻後には苦しみもだえて醜く死ぬんだよ。だから俺が、キレイなままの姿で殺してあげる」
「裏・・切ったの、かっ」
背中から全身に広がる鈍痛に目眩を感じながらも何とかしゃべる籐淋に、『セン』は再び甘く微笑んだ。だがソコには冷たさも溢れていて。
「裏切ってなどいませんよ。元からお屋形様の味方ではないのです。わたくしは誰の味方でもない。わたくしの心の赴くままここにいる。そして、心が言うのです。『夢』の消え失せたお屋形様はもう、要らないと」
ギラリと光る刀身を振り上げた『セン』が、今度はその冷たく美しい顔を悪党の微笑みに染めた。
「あんたの顔、ぜんぜん好みじゃなかったんだ。マラだけはでかくてなかなかヨかったけど。ありがとね。楽しかったよ」
そしてその言葉の後、肉を深く切る醜い音が湖畔に響いた。
「夢破れた後に見る夢だってあるんだけどね。ってもう、聞こえないか。サヨナラ、籐淋さま」
自らの刃で体を切り裂かれ、倒れた籐淋の最後の視界には、『セン』を迎えに来た馬に乗る敵将の姿が、残酷にも映っていた。
*****
「ふふ、千早(ちはや)、ここ緩くなってるよ?体だけじゃなくマラまでデカかったの?あいつ」
「っ、ぁっ、ばっかっ、あっ、デカいだけじゃっ、物、っ足りねえよっ」
忍びとして敵陣内部に偵察に放たれてから、この男、喜多田祐雅(キタダヒロマサ)とは半年ぶりの交わりだ。にもかかわらず、激しく動きながらでもさらりとした言葉を放つこの男にとっては、性交もしょせん軽い運動なのかもしれない。その熱を受け止める自分は既に二度も達していて息も荒く、もう全身疲労状態なのだが。
「ぁっ、あっ、ああっっ、んあっ!」
一番好いところを執拗にも突かれて、言葉もままならない。知り尽くされた体はもう蹂躙されるしかなくて、千早は力の入らない両腕を何とか男の顔に伸ばしてその首に絡めた。
「俺の顔だけ、好きなんでしょ?マラなんてどうでもいいか」
微笑む男はまたもそんなことを言う。
「俺、はっ、ヒロのっ、顔も、っ、腐った頭ん中もっ・・・でけぇマラもっ好きっだぜっ」
「またおだてて。ホントはこの腐った頭に刀突き立てて殺したいくせに?」
男の顔は、確実に己の好みの顔だった。キリとあがった眉に、大きな瞳。だがなぜか可愛さがにじむその顔はとても三十には見えない。だがこの男は千早の住むこの国を支配する『お屋形様』なのだ。そして隣国を手当たり次第に襲っては、我が物にしている。あの籐淋の治めていた国もあっけなく男の手中に落ちたのだ。無論、千早の偵察が勝利を導いたと言って過言ではないが。
千早は生粋の忍だったわけではない。彼はある小さな集落を統括する家に生まれ、そこで何不自由なくふつうに生活していた。だが今から十年前、十二歳になる直前に、己の家族、仲間、全てがこの男に一瞬で消し飛ばされた。理由は分からない。知りたいと叫んでも教えてはくれなかった。千早は若くしてこの国に君臨する男に捕らわれただけでなく、この男の手下から忍びとしての術を教わった。そしてそれから、己の体も心も、なにもかも全て武器として生きてきた。
それはいつでも復讐のためだった。
『この男を、殺す。いつか、殺す』
しかしその願いも努力も、今までことごとく打ち砕かれてきた。寝首を掻こうにも掻けず、暗殺を企てても出来ないまま終わった。
後に残るのは、殺しを成し遂げられなかった自分を嬉しそうに見る憎い男の高笑いだけ。
なら、逃げればいいのにと、心の奥で疼く声がする。それでもなぜ己はコイツのそばにいるのだろうか。自分はもうオカシいに違いない。
ただ、コイツのそばにいれば退屈だけはしない。これまでも籐淋のような負け犬が屍となる瞬間を見て、何度も恍惚を感じた。
実は今回は期待したのに、結局籐淋は弱い犬だった。この男を越えるような強い男はどこにもいないのか。
分かってる。己も所詮負け犬だ。だが屍になるくらいなら、復讐を遂げる夢を見て足掻いていいのではないか。それがたとえ、永遠にかなわぬ夢だとしても。
幾度も抱かれて、この男に少し触れられるだけで甘く疼いてしょうがない体を、限界まで激しく揺らされて意識は朦朧とした。だが、夢だけは、決して消えないで。
「っ殺してえよっ」
憎くてたまらない仇を見る潤んだ瞳は、だが愛しすぎた恋人をみるように、極上の甘美な熱を放つ。
それを受け止めた男は、やはり嬉しそうに微笑んだ。
「いつでもどうぞ」
そう囁いて。
☆☆☆☆☆