クリスマスは君とチョコとクローバーシリーズ
□クリスマスは君とチョコとクローバー
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12月3日(月)
翌日、俺はまたその雑貨店を訪れた。
実は名前すら知らなかった。そのお店。
今日はお店に入る前に看板を確認。
「Ever green」
と書いてある。
この店の外観はカントリー調で、クリーム色の外壁に自然な木の色のままの柱、扉は茶色で開かれた窓には緑の雨戸、屋根は赤っぽいレンガ色。
グリーンと言う名前の通り、淡い緑のやわらかな草原や、秋のカラフルな葉っぱ達や、暖かい熱を放つ暖炉と言ったナチュラルなものがよく似合うお店だ。
置いてある商品も優しい風合いでハートがほっこりするものばかり。
穂瑠くんによく似合うお店と思う。
本当は昨日の今日で少し気が引けたんだけど、なんだかまた彼に会いたくなったんだ。
家に一人でいると、どうしても彼女の事を思い出してしまうし、何より昨日の涙を見られたことで、俺の中で穂瑠くんへの遠慮みたいなものが一瞬でなくなってしまったんだと思う。
出会って直ぐなのに、すごく打ち解けてしまって、それは彼の温厚な人柄や柔らかい雰囲気もあったのだろうけれど。
きっと俺は、寂しさをまぎらわせる為に、ここに来たんだ。
キイ、と茶色い扉を開けて中に入ると、
「いらっしゃいませ。あ、祐くんっ」
と穂瑠くんの声がした。
制服代わりの茶色いエプロンをつけた彼は段ボール箱から商品を棚に並べているところで、彼の姿とフワフワの声に俺はなんだかホッとした。
熱々のチョコレートドリンク飲んだみたいに、胸の奥がほわっと温かくなったような気がしたんだ。
「来ちゃった。今日はちゃんとお勧めの買うよ?教えてくれる?」
「これ、終わったらね」
そう言われたので、俺もダンボールから雑貨を取り出して棚に置き始めた。
「あはは、手伝ってくれてもバイト代出ないよ?俺店長代理だから」
「じゃあ、後でチョコレートドリンク頂戴?今度はソルト&キャラメルがいいな」
「りょーかいりょーかい」
午前10時、開店したばかりの誰もお客さんのいない店で、俺は穂瑠くんの仕事を手伝う。
「祐くん、学校は?」
「俺は4年生だからね、学校の講義はあんまり無いんだ。今日はゼミの先生も出張だしオフ」
「ふーん、お気楽だなー」
「そ、学生はお気楽なんです。でもそのお気楽学生にただ働きさせてるじゃん。店長代理さん?」
「だから、チョコレートドリンクあげるっての。あ、そうだ。そっちやってくれる?これ、並べて欲しいの」
彼はこれ幸いと俺をこき使う。
渡されたダンボールの中は四葉のクローバーをかたどった雑貨でいっぱい。
四葉のクローバーと言えば、知らない人なんていないモチーフだ。
「人気の商品なの。すぐ売れちゃうんだ。だから、追加しないといけなくてさー。あそこ、売り場だから」
指差した先には確かに四葉のクローバーコーナーがあって、だが、そこはもの寂しいくらいに商品が無かった。
「へぇー、随分売れてんだね」
だが、それに返事はせず、ポケットから小さな飴を取り出して口に入れてる彼。
包みからして、あれはイチゴミルクだろう。
「祐くんも、あめ食べる?」
「チョコレートドリンクまで我慢する」
「そっか、じゃ、早くやろっ」
俺の答えにニコリと笑い、彼はクリスマスグッズと、お正月向け商品をどんどん棚に並べていく。
俺もガラ隙だった四葉のクローバーコーナーをきれいにグッズで埋め尽くして、その30分後、バイト代がわりのチョコレートドリンクにありついたのだった。
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