Monsterシリーズ

□Monster
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「そうなんだ・・・・・・無いと困るの?」

 知らぬ振りをして俺は聞く。

「いえ、在庫は大量にあるし、一つや二つなくなっても気付かないくらいですけどね。ただ、今回は・・・・・・」

「空の血液パックがゴミ箱に入っていたから、不思議だなって、誰かが血液を流しに捨てたとか、、そう言う事かなってバイオ研究員が言ってましてね」

 そっか・・・・・・俺昨日飲んだら寝ちゃって、そのままパックをゴミ箱に捨てたのが行けなかったんだ。

 次からは持って帰ろう。

 そう思っていると

「あなた、何か知ってますよね?だって、あの時間にいたんですから」

 うつむいていた俺の顔を覗き込んできた。

 彼の目がまた鋭くなってる。

「・・・・・・俺が、こぼしちゃったんだ」

 嘘をついた。

「掃除してて、パックを落としてさ、そしたら掃除用具の針金の部分でパックがやぶれて・・・・・・」

 最近は、人を襲うこともすごくめんどくさくて、そしたら、たまたま清掃中に、ここに血液パックがあるのを発見したんだ。

 おなかすいたら、ここに来たらいいや、って考えたんだ。
 人を襲うのって、結構大変だもん。


「やっぱり。そうだったんですか。最初からそう言ってくださいよ。誰にでもミスはあります。謝って、そして次回から注意すればいいだけの事ですからね」

 俺の頭をポンポンとなでて、マキは笑顔になった。

 俺は嘘をついたけど、でも、今、彼が俺にふれている事が凄く嬉しかった。

「ごめんなさい」


 俺の頭に手を置いたまま、マキが話を変えた。

「それで、あなたはこんな時間に何をしているんですか?夜更かしするとまた仕事中に寝てしまいますよ」

「マキ・・・・・・マキを待ってたの」



 人を、襲うのは大変なんだよ

 こうやって、俺に振り向かせなきゃいけないんだ


 俺に、夢中になってもらわなきゃならないから

 めんどくさいよね
 
 でも、マキみたいなかっこいい人なら

 ちょっと、がんばってみるよ



 俺は頭にあるマキの手に自分の指を絡めて握りしめた。



「・・・・・・え?、結城、さん?」


 俺は彼を惑わしていく

 こんな月明かりのときは更に俺の能力が冴えるから

 俺を抱きしめて

 俺にキスして

 俺を襲ってよ




 握った彼の手の甲をみつめて、昨日と同じようにキスをした。

 そしてゆっくりと彼に視線を移す。

 マキは驚いて俺を見つめている。


 俺はもう一度呟いた。

「マキを、待ってたの」

 マキの手からビジネスバッグが落ちた。

「な、、んで?」

 彼の声が少し震えてる。

 もう少し、マキが堕ちるまで。

「マキに、キスしてもらいたくて」

 彼の視線が俺の唇を見ているのがわかる。

 俺の唇、おいしそうっていつも言われるんだよ。

 きっと、おいしいよ。

「・・・・・・あなたは。何を、言ってるんですか・・・・・・」


 あれ?

 キス、したくないの?

 また震えた声でマキは俺に言う。

「キスは、昨日、しましたから」

「俺と、毎日しない?」

 空いている手でそっとマキの首筋を触って俺は彼をさそう。

「俺・・・・・・マキに恋したんだ」





 ぎゅっ



 マキが俺を抱きしめてきた。

 彼の熱い息が俺の首筋にかかる。

「いいんですか・・・・・・そんな事言って」

 いいよ。

 望んでいる事だから。

 俺に、恋してよ。

 そして

 マキの血、俺にちょうだい。


「俺の事、嫌い?」

「嫌いなら・・・・・・こんなことしません」

「じゃあ、キス、してくれる?」


 彼の体が俺から離れた。

 そして、昨日と同じように、俺のほっぺたをそっと両手で包み込む。

 俺の目を茶色い瞳がとらえる。

「俺も、あなたに恋してます」


 そう言って




 唇を

 重ねあわせた




 ただじっと、触れ合っているだけの唇。

 だけど、唇からあたたかい体温が伝わってきた。


 そして、今度はゆっくりと唇が離れていく。

 触れ合ってた時間はきっと5秒くらい。

 離れたマキの唇が動く。

「これから、どうするつもりですか?」

「俺と、付き合おうよ。きっと楽しいよ」

 フニフニと俺のほっぺたを触りながら彼は言う。

「なんか、お茶行かない?くらいの軽い誘いですね・・・・・・そんなもんですか」

「男同士だけど、そのうちきっといい方向が見つかるんじゃないかな?」

 笑いながら言った俺をそっとマキは抱きしめた。

「よくわかんないですけど、あなたとお付き合いすることにしますよ。じゃあ、今日はこれで」

 すっと体を離して

「さようなら、また明日会えるといいですね」

手を振って彼は家へと帰っていった。


 彼を手に入れたのかな?

 恋してるって言ってくれたし、キスもしたけど・・・・・・

 なんか実感が湧かなかった。

 やっぱり、こんな事は初めてだった。

 夜なのに

 今から肌を触れ合わせられると思ったのに

 深いキスも無いし、セックスも無い。

 マキを食べたかったのに。

 君の血をすすりたかったのに。



 また明日

 その言葉、信じてていいのかな?

 マキは、明日も俺に恋してくれるのかな?

 俺との、偽りの恋、してくれるのかな?


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