Monsterシリーズ
□明日の記憶
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「…あれ?」
気付くと布団の中にいた。
隣には結城さんがスヤスヤと寝ている。
今のは。。。。。夢?
でも、確か11月25日は今日。誕生日って本当だろうか?
だとしたら、30才に、結城さんはなったわけで、そこは恋人としてやっぱり、祝いしないわけにはいかない。
と俺は変な決意をして布団から抜け出した。
時計を見ると5時。
時間はある。
俺はパソコンの電源をいれてお祝いの準備を始めた。
ネットでケーキと夕食を注文する。プレゼントも。
とは言っても、プレゼントには悩む。
一体彼に何をあげよう?
そんな事を考えながらする準備はとても幸せで、俺は時間も忘れて夢中になっていた。
そして、コンコンとドアをノックされて、初めてもう7時半だと言う事に気付いた。
「マキ?起きてるの?」
「おはようございます。少し仕事があったので」
「おはよ。じゃ、ご飯作って待ってるから」
ありがとうございますと返事をして俺は迷いに迷っていたプレゼントを決定し、パソコンをシャットダウンした。
会社に行く準備をしてダイニングテーブルにつくと
「あ、マキ、今日は俺、自分の家に帰るよ」
と結城さんが呟いた。
せっかく誕生日の準備をしたのに、、、と俺は悲しくなってしまったけれど、よく考えたら、見た夢を信じきってお祝いの用意をしてしまった自分に笑いが少しこみ上げた。
そしてその笑みをこらえて
「なにか、あるんですか?明日は土曜日だし泊まっていってくれたらいいのに」
と、彼に聞く。
「うん。今日はね、ママの命日なの。だから昼で仕事を切り上げて墓参りに行ってくるから。多分6時頃には帰って来れると思うけど、もしかして遅くなるかも知んないし」
……やはり、あの夢は、本当だったんだ。
どう言う事だろう。
もしかして、結城さんが見ていた夢を俺も一緒に見てしまったのかもしれない。
隣で寝ていたから。。。。
同じ夢を見る現象は科学的に立証されていないとはいえ、脳活動は電気信号のやり取りに過ぎないのだから、隣に寝ていた夢を見ている結城さんの脳が出す電気信号に影響を受けて俺の脳も同じように活動した…
いわゆるシンクロしていた、と言う事も考えられる。
まあ、結城さんの、吸血鬼の存在自体が科学的に立証されていないのだから、考えても無駄な事だけれど。
どっちにしろ、きっと今日は結城さんの誕生日に違いないと確信した俺は、
「いいですよ。待っていますから。帰ってきたらうちに来てくれませんか?」
と、家に戻ると言った彼を引き止める事にした。
「でも、、、、」
「だめですか? 週末だし、ふたりでゆっくりしたいんですけど」
「うん、わかった。だけど先にご飯食べてくれてていいし」
「夕食は俺が用意しておきますし、いつでも帰って来てください」
にこりと微笑む彼を見つめて、俺は用意してくれた朝食に手をつけた。
なぜ彼は誕生日を秘密にしているのだろう?
と疑問に思いながら。