Monsterシリーズ

□君がいいんだ
3ページ/13ページ

ただ、好きなんだ【結城】


☆☆☆☆☆

「ふふっ、かわいいなぁ。んーあったかぁい」

 俺はひよこを触りながら、そう呟いた。
 
 俺、マキのうちにね、また来ちゃったんだ。午後の仕事をしてたら、”来ませんか?”ってメールが入ってたの。

 なんかね。
 いわれたら行きたくなっちゃうよね。
 だって好きだもん。
 好きな人に誘われて断るなんて無理だよ。

 ひよこがさっきからずーっとピヨピヨ鳴いてる。
 かわいいなー。

 ご飯あげてさ。だっこしてさ。
 なでなでしてあげると、ピヨピヨ言ってんの。
 あ、一匹寝ちゃったよ。
 んふふ。

 んーー、なんか、マキみたいって思ったんだけど、言ったら怒るかな?
 だってさ、マキってさ。
 カッコいい感じしてたけど、凄いかわいんだよ。

 俺の膝にコテン、って頭乗せてきたりさ。なんかしらないけど、座ってたら俺の膝をもみもみしてきたりさ、
 ご飯作ってると後ろから俺の肩にあごのせてきたりもするんだ。
 可愛いよね。

 んで、くっついてたら、寝てたりすんの。
 仕事が夜の時とかもあるから疲れてんだと思うんだけど
 そんなマキがね、可愛くて可愛くて。

 ほら、今も俺の隣に座って俺の腰に腕まわしてくる。

「かわいいですね。結城さんみたい」
「んふふっ、そう? 俺ひよこ?」

 あはは。おかしいっ。
 俺はマキみたいって思ってんのに、マキは俺みたいって思ってんだ。

「ねえ、結城さん。希山さんの事なんですけど。。」

 そしたらマキが、駿のこと言ってきた。
 今日のお昼休み、マキがちょっといつもと違うかったんだけど、それが、駿の事で、だったんだよね?

 その時も何か、言いかけてたから、、、
 その話の続きかなあ。。?

 俺、マキが、心配だよ。
 だってさ、駿だって俺と同じ吸血鬼なんだよ。
 俺たちは、人を魅了して狂わせてしまうんだ。
 自分の食事のために。
 相手の本心なんて関係なく、無理矢理に。

「んー。ひよこさあ、俺じゃなくてマキに似てるよね」

 俺は、聞きたくなくて、ひよこに話を戻した。

 マキだって、最初俺をみて、欲情したんだ。俺の見た目に惑わされて。
 駿は俺よりもカッコいいし、すごい魅力あるから・・・・
 いつか、マキが、、駿の事好きになっちゃうんじゃないかって。。。
 実は、不安だったんだ。

 そう・・・・マキが心配なんじゃなくて、
 俺が・・・・耐えられないんだ。

 マキを失う事が・・・怖いんだ。

「俺に似てます? じゃ、2匹いるから、俺と結城さんってことですよね? どっちがどっちかな?」

 きゅって俺の腰を両手で締め付けてマキが笑顔で言う。目の前のひよこも2匹くっついてムニムニしてる。
 俺はマキに顔を向けてチュってキスした。

「あ、希山さん、ひよこいらないって言ってましたよ。残念です」
「そうだったんだ……って、マキ、、駿に会ったの?」

 連絡、、取ってたんだ。。
 ってまた不安になった。

 付き合ってもう1年になるけど、実は俺、わざと二人を会わせなかったんだ。
 一緒に遊んだりも出来るのにね。
 俺は、臆病者だよ・・・

「ええ、廊下でばったり」

 にこりと笑っていうマキに、俺はちょっと、ほっとした。
 連絡した訳じゃなかったんだ。
 ああ、なんでこんなに不安なんだろう。
 ねぇマキ?
 俺の事、好きって、今日言ってくれたよね。
 俺さ、マキが、大好きだよ。

 もう、、マキのそばから離れられないんだ。
 離さないで、俺を。。
 お願い。。

 俺はもう一度マキにキスをした。


「んっ、、、、結城さん。。」
「なに?」

 唇が離れたら、マキが優しく微笑んで話し始めた。

「聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「うん。。。」

 なんかドキドキした。
 こんなに丁寧に質問していいか聞くなんて。。。
 いったい、、なんだろう。。。
 先ほどの不安が胸をよぎる。

「希山さんには、恋人がいますか?」
「いや、駿は恋人は作らないって言ってたよ」

「やはり、、そうですか。。。」

 マキは、少し寂しそうな顔をして呟いた。

 どうして・・・?

「なんで・・・? 駿の話なの?」

 俺は不安でドキドキしている気持ちを抑えながら聞いた。ピヨピヨと手の中のひよこが何も知らずに鳴いている。

 怖い、、、

「いえ、俺の知り合いが希山さんの事を好きみたいなんです。その方が希山さんとお付き合いできたらいいなと思いましてね」


 え、なんだ。そっかぁ

 一気に体の力が抜けて、俺は危うくひよこを落とすところだった。

「でも、、その人、人間でしょ?」

「ええ、そうです。だから、多分一方的に希山さんの事を好きなだけなのかな? って。でもキスしてましたし俺にはよく分からなくて」
「えっ!、キス?」

 驚いて、またひよこを落としそうになっちゃったよ。

「希山さんからのキスでしたし、きっと、彼も少なからず好意を持っているとは思いますが」

 ん、、、でも駿は。

「でも駿、俺にも平気でキスするくらいだから、結構いろんな人とあまり気にせずキスできるんだよね」

「キス……してるんですか?」

 マキが急に怖い声で、ぎゅって腕に力をいれて俺の腰を締め上げた。

「してないよっ。昔の話だよっ。今はマキだけ。俺がキスするのは、俺とキスするのはマキだけだよ」

 そう言った俺のあごをつかんで唇を乱暴に重ねてくる。

「ココは、俺だけのものです」

 マキ・・・・
 うれしい・・・・

 俺を求めてくれてるんだ。
 俺にはマキだけなんだよ。

 俺がマキに狂ってるみたいに
 マキも、俺に狂ってよ。

 もう、マキしか見えないから。




    *


「あ、、、マキ。。。」
「ごめんなさい。。またやりすぎてしまいました」

 意識を失ってた俺をぎゅっと抱きしめて、謝ってきた。
 いいのに。あやまんなくて。

 もっと、キスして、セックスしたいって
 思ってるの俺だけなのかな?
 何度しても、またすぐしたくなるんだ。

 マキを、いつでも、感じたいよ。
 だから、謝んないで。
 俺に、いっぱいキスしてよ。
 俺を、マキの全部で満たしてよ。

「ううん。俺、キスすんの好きだよ。だからいっぱいしようよ」

 でも、想いを伝えるのは恥ずかしくて、俺はこれしか言えなかった。

 マキは俺の頭をくしゃくしゃしてる。

「あれ? ひよこは?」

 さっきまで手の中にいた黄色いふわふわがいなくなっている事に俺は気付いた。

「なべに戻しておきましたよ。部屋中走られても困りますから」

 そう言って笑うと、また話を始めた。

「あなたは、俺の血をのんでいますが、希山さんは、どうやっているんでしょうか」
「それは、俺にも分かんないけど、きっと、その都度誰かを選んでいるんじゃないかなあ」
「では、課長もたまたま選ばれただけ、ということでしょうか?」
「え? 課長?」

 課長って、あの課長だよね。前に少しだけ会った事あるんだけど。
 そんな身近な人が。

「ええ、でも、行きずりと言うにはかなり親しそうですし、一度ではなく、何度か関係を持っていると言うような感じがしますが」

「そうなんだ。じゃ、俺聞いてみるよ。駿に、好きな人いるかどうか」
「いえ、いいですよ、それは。俺たちが勝手に動いて、彼らの関係が悪化しても困りますし、何より、二人の問題ですから」
「うん、そうかなあ?」
「ええ、まだ今は何もするべきではないと思います。また、状況が変わったら行動を起こす必要もあるかもしれませんが」

 マキはそう言って俺をまたぎゅっと抱きしめた。


 知らなかった。
 駿が同じ人と何度も関係を持ってるなんて。
 俺たちはその場限りのセックスしかしないんだ。
 だって、血を飲むのが目的だからね。
 何度も同じ人から血をもらって、気付かれでもしたら自分の命が危険になるかもしれない。

 俺も、マキに出会うまではそうだった。
 もしかしたら、その課長さんが駿の大切な人になっているのかもしれない。
 俺にとってのマキみたいに。

 そうなら・・・応援したいな。
 だって、ほら
 今、俺はマキといるのが、こんなにも幸せなんだから。

 人と吸血鬼でも、恋が出来るんだ。

 好きなんだ。
 理由なんてない。
 ただ、マキが
 大好きだから。

☆☆☆☆☆
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ