総一テキスト
□+-保健医皆城先生
1ページ/4ページ
「みなしろせんせー!」
そう叫んで勢いよくドアを開けるのは、涙で顔がぐしゃぐしゃになった小さな女の子だった。
「そんなに泣いて…どうしたんだ?怪我か?」
「あのね、あのね…あたしのせいでね、しょーちゃんがいたいいたいしちゃったの…!!」
どうやらこの子が怪我をしたのではないらしい。
顔を真っ赤にさせて、必死に訴えている。
「しょーちゃん?」
「うん!あたしがね、木にのぼっておちそうになって、しょーちゃんがたすけてくれたんだけど、しょーちゃんの上にあたしが…しょーちゃん、しょーちゃんがぁ…」
何処からそんなに涙が湧くのかと不思議なぐらい、大きな瞳からぼろぼろと涙を流す。
僕はハンカチでその涙を拭いて、「とりあえず、そのしょーちゃんの所に案内してくれるか」と言って、救急セットを右手に持った。
少女の話では、少女が木登りをしていて落下し、それを助けようとした"しょーちゃん"が下敷きになったのだという。
少女は嗚咽と動揺でまともに話せる状態ではなかったので、とりあえず現場のグラウンド脇の植え込みへと急いだ。
グラウンドに着くと、子供達の人だかりの中に黒髪の青年の姿がひょろりと目立った。
「…一騎?」
「あ、総士!そっちに連れて行こうと思ったんだけど、意識がなくて下手に動かせなかったから…早く診てやってくれ!」
「あ、あぁ…」
今は昼休みなのに、何故教師の一騎がグラウンドにいるのだろうと少々疑問に思ったが、周りにいる子供達を見て納得した。
恐らく、子供達と遊んでいたのだろう。
一騎は子供達からの信頼が厚い。昔と変わらず口数は多いとは言えなかったが、時折見せる笑顔と真摯な態度に、子供達は自然と歩み寄ってきた。
「……軽い脳震盪みたいだな。詳しい検査を行わなければ断定できないが、恐らく軽い打撲以外異常はないだろう」
「そっか…よかったな、暫く寝てれば大丈夫みたいだぞ」
そう言って一騎は泣きじゃくっている少女に微笑んだ。
少女は一騎の言葉に安心したようで、また静かに安堵の涙を流した。