総一テキスト
□+ふぁふにゃー
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「ソロモンに反応あり!アルヘノテルス型2体が接近して来ます!」
「またか…襲撃ペースが短くなっているな…。偽装鏡面解除、ヴェルシールド展開!パイロットを直ちに集合させろ」
「ヴェルシールド、展開します!」
日に日に激化する、フェストゥムの襲撃。
よりによってこんな日に来るとは…と、史彦は内心苛立っていた。
今日は3月14日。
怒涛のバレンタインから1ヶ月経った、ホワイトデーだ。
「接触までは?」
「あと4分54秒です!」
緊迫するCDC。赤く染まるモニター。
鳴り響く警報の中、誰かのため息が微かに聞こえた。
「遅くなりました!状況は!?」
「アルヘノテルス型2対が接近中だ。恐らく狙いは此処だろう。最近集中的に此処が狙われているからな。奴らも…学んでいるという事か」
少し息を切らし、小走りでCDC内に入ってきた総士は、史彦の言葉に舌打ちをした。
「何でこんな日に…」
「全くだ」
お互い考えている事は同じなのか、うんうんと頷く二人。
その様子を何処か呆れながら横目で見ていたCDCの面々だが、接触まで残り僅かだと思い出し、意識をモニターへと向けた。
「今日はマークザイン、ジーベン、フィアー、ドライを出させよう。後の指揮は君に任せる」
「判りました」
総士は史彦の指示に一言で返すと、足早にジークフリードシステムへと向かった。
「皆、聴こえるか」
クロッシングの後、目の前一面に広がるモニターを見ながら、総士は淡々と呼びかけた。
『あぁ。今日はトリプルドッグなのか?』
「そうだ。マークザインとマークドライで180度前方、続いてマークフィアー、マークジーベンで後方と援護を頼む」
パイロット達の目の前のモニターに、トリプルドッグの図が現れる。
一騎のザインとカノンのドライが並行に前方で接近戦を担当し、その後方に甲洋のフィアー、真矢のジーベンが一列に続き、後方と前方援護を担当する配置だ。
モニターを一瞥して、『了解』と言う所だが、クロッシング中の総士の思考の断片が一騎達の頭に流れ込み、動きが止まった。
(フェストゥムめ…!何故よりによってこんな時に来るんだ!!今日は待ちに待ったホワイトデー!白い日だぞ!?2ヶ月以上前からこの日の為に準備し、予行練習だって何度もしたのに…!!くそっ!さっさと片付けなくては、僕の完璧な計画が全て台無しになってしまう!!)
(そ、総士…?)
(計画?計画とは何の事だ?)
(…総士らしいな…)
(……カメラとビデオの用意しなくちゃ…)
(あぁ、白い日…ホワイトデー…。なんて甘美な響きなんだ…。一騎を僕の白で汚したい…)
(総士、もう止めてくれ!!)
(皆城の白、とはどういう意味だ…?城と白をかけているのか?いや、それだと汚すという意味合いは含まれない筈だし…)
(陶酔してるけど、もう発進した方が良いんじゃないのかな?)
(また翔子に話す事が増えたわ…)
普通なら緊迫する筈の出撃前も、総士の余計な思考と感情により、パイロット達の感情も少しずつ乱れていく。
「パイロットの脳派、微弱ですが乱れ始めています!」
「総士くん…気持ちは判るが、今は出撃前だぞ…」
CDCではため息の嵐だ。
そういう史彦も、落ち着きなく指先でデスクを叩いている。