総一テキスト

□+-保健医皆城先生
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キーンコーンカーンコーン…


「あ、もうこんな時間か。ちゃんと手洗いうがいをしてから教室に戻るんだぞ?」

一騎が言うと、はーい、と口々に言いながら駆け足で去って行く子供達。
泣いていた少女は、「…ほんとにしょーちゃん大丈夫だよね?」と、一騎に念を押している。

「大丈夫だ。皆城先生が大丈夫だって言ってるんだから。翔太は放課後まで保健室に居るから、授業が終わったらお見舞いに行こうな?」

あの少年は”翔太”と言うのか。

「うん!…うん!!まかべせんせ、みなしろせんせ、ありがとー!」
「あぁ」
「またな」

少女の後姿を見送ってから、一騎は慎重に倒れた少年の身体を持ち上げた。

「良かった…脳震盪で済んで。グラウンドで遊んでて、いきなり植え込みの方から悲鳴が聴こえたから何かと思った」
「僕も、さっきの少女が泣きながら保健室を訪ねてきた時は驚いた」
「総士でも驚くことってあるんだな」
「当たり前だ。人をなんだと思っている」
「変態」

全く…幼い頃から一騎はこうだ。
事あるごとに僕のことを「変態」「変態」と…。
これではまるで僕が本当の変態みたいじゃないか。
(心外だ!)


「一応、親御さんに電話しとかなきゃな」
「あぁ…戻ったら詳しい検査も行おう」


この小学校の保健室には、通常の学校には無い程の医療設備が整っている。
それこそ、その気になれば手術さえ出来る程の…。
これ程までの神経質な設備導入の背景には、フェストゥムとの長く厳しい歴史が関係している。


竜宮島に戻ってきた僕を一番驚かせたのは、1年前以上の、アルヴィスやヴァッフェラーデン等の施設の充実だった。
武装した島…そんな言葉では表現出来ない程、島の人間は神経質になっていた。
表面上は、平和な島と偽っていても―――。


「…し?そーし?」
「え、あ、すまない…少し考え事をしていた」
「変な総士」

一騎がクスリと笑った。
…とにかく、もう過度な設備は要らないような、そんな平和が欲しい。
あんな島の中では、本当の平和なんてものは手に入らない。




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