総一テキスト

□+恒例行事の罠
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―――2月14日。
乙女にとっては決戦の日。
なんとか授業をこなし、早々と教室を去る一騎と総士。
甲洋はというと、教室で女生徒の波に飲まれている。

そんな様子を見て、横目で"頑張れよ"とアイコンタクトを送りながら、一騎は足を速めた。




「…なんとか切り抜けたな」
「あぁ…もう沢山だ…」

ふぅ、とため息をついて坂道を下る総士と一騎。
海には夕日が溶け、少しずつ空を蒼く染め上げていた。

「そういえば、今年は僕にくれないのか?」
「……そんなもの欲しそうな目で見るなよ」
「欲しいんだから仕方ないだろう」

口を尖らせて言う総士。
その表情に、ぐっ、と言葉を詰まらせる一騎。

「あーもーちゃんと用意してるからそんな顔するなよ!」
「そうか。なら早く一騎の家に行って食べなくてはいけないな!」
「えっ!?ちょ、総士っ!?」

ぐいぐいと一騎を引っ張っていく総士。
文句を言う間もなく、"真壁"という表札の前に着く。

「さぁ、鍵を開けてくれ!」

バッ、と手で扉を指し、晴れ晴れとした笑顔を向ける総士。
お前は何様だ、と突っ込みたかったが、その言葉を飲み込んで鍵を開ける。
このままここで狼狽していても自分が家に入れない。
そんな間抜けな事態には陥りたくなかった。


居間に総士を通し、台所へ向かう一騎。
その後姿を見ながら、「いつ見ても可愛い尻だ…」とポツリと零す総士。
瞬間、一騎が肩をビクリと震えたのは気の所為ではない。




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