総一テキスト

□+恒例行事の罠
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「それにしても、今年はチョコじゃないんだな」

ケーキを流れるような動作で食べながら、ふと疑問に思った事を正直に言う総士。
その言葉にビクリと一騎の体が跳ねた。

「そ、総士、甘いもの嫌いだろ…?」
「一騎が作ったものなら、何だって喜んで食べるさ」

(偽)純粋培養100%の笑顔で言われ、顔を引き攣らせる一騎。
(い、言えるわけないだろ…!?去年みたいなことされたくないからケーキにしました、だなんて…!!)
言ったらどうなるか、考えただけで嫌な汗が背筋を伝う。

「はぁ…またやりたかったが…残念だな」
「っ…!?」

心を見透かしたようなその言葉に、思わずガタンと音を立てて立ち上がる一騎。

「ばっ、馬鹿野郎っ!!俺はもう二度とあんなのはやらないからなっ!!」

頬だけではなく、耳や首までも朱に染め上げて怒鳴る。
脳裏に走馬灯のように浮かぶのは、去年のあの淫らな出来事。

「あんなに気持ち良さそうに喘いで悦んでたのに…?」
「そっ、それは総士がっ…!!」

言いかけて、ハッ、と気付いたように我に返る。
総士は一騎に厭らしい言葉を口にさせる気なのだ。
そんな総士の言葉攻め…ある意味羞恥プレイに耐えかねたのか、一騎の大きな瞳に涙が溜まっていく。

「僕が、何?」
「っ……」
「言えないのか?」

俯いて、押し黙る一騎。
そんな一騎を見遣りながら、総士は右手のカップをフォークに持ち替えて、最後の一口を刺した。

「もっともっと、って自分から足を開いて…腰振って…厭らしい顔をして…」
「そ、し…?」

じりじりと一騎ににじり寄る総士。
一騎の背後で、空間の終わりを告げるドンっという音がした。

「そのくせ恥ずかしがり屋で、すぐ赤くなる。…まぁ、そんな所も可愛いが」

クツクツと喉の奥で笑った後、ケーキの刺さったフォークを自分の口元へと運ぶと同時に、腕を一騎の腰へと絡める。
立ちながら目の前で起こったその光景に、頭の端で警告音が鳴る。

(こ、このままだと…!!)

そして、ケーキを咀嚼しないで一騎の口元へと自らの口を近づける総士。

後方の壁、前方の総士。
横に逃げようとしても、総士の腕が邪魔をするだろう。
迫り来る形の良い唇。
逃げ場は無い。

「っ…やぁっ…!!」


―――と、その時。
お決まりの展開(人物とも言う)がやってきた。




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