総一テキスト

□+恒例行事の罠
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バンッ

「一騎っ!!??」

肩で息をしながら居間に入ってきたのは、総士の良き好敵手(と書いてライバルと読む)であり、未来の義父(総士談)の真壁史彦である。

「今一騎が泣いた電波が届いたんだが……かっ、一騎!?」

部屋の隅で壁と総士に挟まれたまま、ビクビクと震えている一騎を発見した史彦。
途端に目を見開き、プルプルと肩が震える。

「お、親父っ…?」
「……皆城総士…よくも私の一騎をっ…!!!」
「ちょ、ちょっと待てっ親父っ!!」

一騎の制止の声も聞かず、きっちりと着こなしていたアルヴィスの制服を脱ぎ捨てていく史彦。

「許さんぞ、キサマァアアァアアアァ!!!」

上着とスカーフを脱ぎ捨て、ムササビの如く総士に飛びかかる。
ヒィっと一騎の喉が鳴り、同時に総士が一騎の腰を抱いて優雅に避けた。

重力に逆らわず、素直に落ちていく史彦。
人間、急には止まれない。
バンッという衝突音と共にカエルのような呻き声を上げ、ズルズルと床へ倒れこむ。

その光景を呆然と見る一騎と、ほくそ笑みならが見る総士。

「親父っ!?」

傍から見れば、大の大人の行動ではない。
しかもこの島を支えるアルヴィスの指令である。それが今目の前で床とオトモダチになっている男でいいのだろうか。
一騎は真剣に考えてしまった。


「…真壁指令。お言葉ですが、僕は別に一騎を泣かした訳ではありませんよ」

倒れたまま微動だにしない史彦に、上から冷ややかな目線を送りながら言う。
すると、ヨロヨロと立ち上がる史彦。



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