総一テキスト

□+My sweet child
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「一騎、一緒に帰らないか」
「総士・・・」

日直日誌を先生に提出して教室に戻ってくると、其処には鞄を持った総士が佇んでいた。

「ん・・・ちょっと待ってて」

なるべく急いで鞄へ教科書類を詰め込む。
詰め込むと言っても、今日は教科書が嵩むような教科はなかったので、鞄は結構軽い。

「それじゃぁ、行こう」

俺の支度が済んだのを見計らって、足を進める総士。
それに着いて行く俺。

なんだか最近の習慣になりつつあるそれに、不思議な気分を伴いながらも歩いていく。



「・・・今日の保健の授業、一騎はどうだった?」

まるで今日の自分の思考を読まれていたかのようなその言葉に、思わず狼狽してしまう。

そんな俺に気が付いたのか、緩く口角を上げて笑う総士。

「可愛いなぁ一騎は」
「・・・またそうやってからかう。そんな事言われて喜ぶ男なんていないぞ」
「僕は事実を言ったまでだ」

妙に真剣な顔をして俺を見る総士。
これから何を言うのか、するのか、なんとなく自分にとっては顔から火を噴きそうなぐらい恥ずかしい事なのだと予想はついた。

「どうせ一騎は、僕との子供が欲しくて授業中あんな顔をしていたんだろう?」
「・・・は?」

「男同士の子供の出産はこれまでにも学者達が研究していたようだが、卵子に相当するものが男性にはないというのが最大の欠点だ。男性の体内で子供を育てる事は可能だとこれまでの研究で立証済みだが、それには高いリスクを伴い・・・」

―――何を、言っているんだ、こいつは。

止まない総士のマシンガントーク。
普段は寡黙で通っている奴なのに、何故こういう時に限って饒舌になるのか。

「・・・で、子供の名前は総一(そういち)なんてどうだ、一騎」
「・・・はぁっ!!??」

何でいきなり其処に飛ぶ!?
・・・いや、出産や子供の話をしていたら子供の名前の話になるのは順序的には判るけど、何でそれが俺と総士の子供の話になるんだよ!?

「総士の総に、一騎の一。合わせて総一。嗚呼、なんて素晴らしい名前なんだろう・・・!!」

(うわっなんか一人で悦に入ってるよ!!)

「総一なら僕が攻めポジションだし、カップリングの名前でもあるしな!全国の総一(そうかず)好きさんも喜ぶに違いない!!」

攻め?カップリング?ソウカズ?
・・・だめだ、理解不能な単語ばっか・・・。

とりあえず俺はひとり悦に入っている総士を置いて、スタスタと坂道を登っていった。
後ろから俺の名前を叫ぶ総士の声が、背中に届く。

「まぁ・・・総一(そういち)って名前・・・悪くはないかな・・・」

(なんて・・・総士の前で言ったら大変な事になるんだろな・・・)


そんな事を考えながら、眩しい程に視界に入る、夕日を反射したオレンジの海を見た。


Fin
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